新しい働き方を考えるための社会保障

これからの時代は、転職・独立・起業などの「新しく、自分らしい、自由な働き方」を選択できる時代となります。
新しい働き方を目指す人たち向けに、働き方による社会保障の違い(メリット・デメリット)を紹介していきます。

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Point③働き方による収入の安定性の違い

ここでは働き方の違いにおける収入の安定性について検討していきます。

なおここでいう収入の安定性については、収入が高い低いという観点ではなく、 病気や怪我、高齢による所得補償の低減リスクや倒産・廃業などの経済的リスクに対して、どれだけリスクヘッジができているかどうか、また長期にわたり収入の変動が多いか少ないかで判断しています。また人生におけるリスクは様々なリスクが考えられますが、ここでは働き方との関連性から所得補償という点に的を絞って、以下のリスクについて検討していきます。

上記のリスクにおける所得補償という点で言えば、社会保険制度との繋がりが強いため、年金制度や医療保険制度が充実している会社員(正社員) が最も収入の安定性が高い働き方と言えます。また現状の日本固有の雇用制度(終身雇用制度・年功序列賃金…etc) を踏まえると、長期にわたり企業に雇用される会社員が収入の変動も少ないと言えるでしょう。

働き方による収入の安定性の違いについて、以下の表でまとめてみました。

 

具体的な違いを知っておこう!

ここでは働き方における①老後リスク、②病気ケガリスク、③失業リスクの違いについて触れていきます。
※なお、パートタイム・派遣労働者の方については、労働条件や勤務先の違いによって、社会保険の適用可否が異なるため、社会保険(厚生年金、健康保険、雇用保険)の適用がある方は「会社員」として、社会保険(厚生年金、健康保険、雇用保険)の適用がない方「個人事業主・フリーランス」として参照ください。

働き方による老後リスクを考える

老後リスクとは文字通り、加齢による身体の衰えによって稼得能力が低くなることで、収入が減るリスクのことを言います。
ここでは以下の表のとおり同じ年収であることを前提として、65歳から年金を受給した場合を想定して働き方による違いを比較してみました。

働き方平均月収保険料納付期間適用年金保険料年金受給額
(年間)
年金受給額
(20年換算)
会社員(正社員)400,000円40年間厚生年金保険
国民年金
37,515円1,833,000円36,660,000円
個人事業主
フリーランス
400,000円40年間国民年金16,400円781,000円15,620,000円

会社員(正社員)と個人事業主・フリーランスとでは、年金受給額において厚生年金保険分の差が出てくることとなり、仮に20年間受給するとなれば約2000万円もの差が発生します。なお今回は老後リスクに備えるわけですから、年金受給額の多寡に関わらず、老後における生活資金を年金でカバーできればリスクヘッジが出来ていると考えます。そこで老後においてどれくらいの生活資金が必要になるのか確認していきましょう。以下は総務省統計局での家計調査における支出のデータとなります。

単身世帯の場合の生活資金

消費支出(月額)146,036円
内訳
食料36,496円
住居14,297円
光熱・水道13,061円
家具・家事用品5,672円
被服・履物4,025円
保健医療9,078円
交通・通信13,899円
教育40円
教養娯楽16,855円
その他32,612円

出典:総務省統計局 2019年家計調査(単身世帯 65歳以上)

家族世帯の場合の生活資金

消費支出(月額)281,654円
内訳
食料77,405円
住居16,301円
光熱・水道22,494円
家具・家事用品12,239円
被服・履物8,521円
保健医療15,964円
交通・通信39,158円
教育999円
教養娯楽28,968円
その他59,605円

出典:総務省統計局 2019年家計調査(2人以上世帯 65~69歳

以上のデータをもとに老後の生活費用を想定していくことになりますが、これは各家庭の平均値であり、具体的な支出については個々に判断していく必要があるので注意ください。
なお統計局をデータを参照すれば、単身者の場合は月間支出が約15万円なので、年間にすると約180万円の支出が見込まれます。
前述したとおり平均月収40万かつ保険料納付期間40年間を前提とすれば、会社員の方であれば国民年金+厚生年金保険で年間約180万円の収入が見込めるので概ねリスクヘッジはできていますが個人事業主・フリーランスの方は国民年金のみ(年間約80万円)のため、年間100万円の差を埋めていく必要があります。仮に20年間受給することを考えると約2,000万円の貯蓄が必要となります。

また夫婦2人世帯の場合は、月間支出が約28万円であり、年間にすると約340万円の支出が見込まれます。
会社員かつ専業主婦(主夫)の家庭であれば、2人の年金受給額で年間約260万円の収入が見込めるので、年間で80万円の差を埋めていくことになりますが、この点については「会社員の方が現役時代により多くの収入を稼ぐ」もしくは「専業主婦(主夫)の方がパートで稼いだ収入を貯蓄に回す」「夫婦でダブルで厚生年金保険に加入する」等の方法でリカバリーできますし、仮に20年間受給することを考えると約1,600万円の貯蓄が必要となりますが、退職金や確定拠出年金等でカバーすることも可能です。
※夫婦共稼ぎモデルの場合の年金受給額については⇒こちら

一方で、夫婦とも厚生年金保険に加入していない場合(個人事業主の家庭など)は、2人の年金受給額は約150万円程度に留まるため、年間で190万円の差を埋めていく必要があり、仮に20年間受給することを考えると約3,800万円の貯蓄が必要となります。夫婦ともに個人事業主・フリーランスという働き方を固定するとなると、主には収入の一部を資産運用に回してリカバリー(貯蓄)することとなり、この点最近ではNISAや個人型確定拠出年金という金融商品が出ていますが、リスクヘッジの方法が少ないというのが実情です。

働き方による病気・ケガのリスクを考える

病気・ケガのリスクとは文字通り、病気やケガまたはそれに伴う障害によって身稼得能力が低くなる(または無くなる)ことで、収入が減るリスクのことを言い、以下の表のとおり働き方による違いを比較してみました。※なお治療費負担については健康保険または国民健康保険のどちらかに加入することとなり、医療費の補償内容はほぼ同じです。

病気やケガの場合
働き方適用保険補償内容補償期間
会社員(正社員)健康保険傷病手当金
(1日あたりの収入の約60%)
支給開始から1年6か月
個人事業主
フリーランス
国民健康保険

⇒健康保険における傷病手当金については知りたい方はこちらへ

一定の障害がある場合
働き方適用保険障害等級補償内容
会社員(正社員)国民年金
厚生年金保険
1~3級までが対象障害基礎年金+障害厚生年金
個人事業主
フリーランス
国民年金1~2級までが対象
※3級は対象外
障害基礎年金のみ

⇒障害等級1~3級の内容について知りたい方はこちらへ

⇒障害基礎年金について知りたい方はこちらへ

⇒障害厚生年金について知りたい方はこちらへ

 

病気やケガについては、会社員(正社員)の方は健康保険から傷病手当金として最大1年6か月の所得補償がある反面、個人事業主・フリーランスの方は所得補償はありません。
また病気やケガが重度な場合、一定の障害に該当すれば、障害基礎年金や障害厚生年金の支給対象となりますが、会社員は障害等級1~2級であれば障害基礎年金と障害厚生年金の2階建ての補償となり、また3級に該当すれば障害厚生年金単独の補償を受けることもできるのに対して、個人事業主・フリーランスの方は、障害等級3級に該当しても補償はありませんし、障害等級1~2級であったとしても障害基礎年金単独での補償となることから、独自でその分のリスクヘッジ対策として、民間の医療保険や就業不能保険(収入保障保険)へ加入を検討していく必要があります。

働き方による失業リスクを考える

失業リスクとは、会社の倒産・廃業に伴う失業もあれば、自身の病気やケガを理由に解雇・退職する場合等で、無収入または収入が減るリスクのことを言います。なお個人事業主・フリーランスの方は雇用という概念ではないので、倒産や廃業に伴うリスクということになりますが、ここでは以下の表のとおり働き方による違いを比較してみました。

 

失業した場合
働き方適用保険補償内容補償期間
会社員(正社員)雇用保険基本手当
※1日あたりの収入の約45%~80%の範囲
90日~150日の範囲
※特定の者や特定の事由による離職の場合は最大360日まで
個人事業主
フリーランス

⇒雇用保険の基本手当について知りたい方はこちらへ

会社員(正社員)の方については、雇用保険の適用を受けられるのが最大のメリットであり、これは会社の倒産や廃業に伴う失業だけに限定されておらず、自己都合退職における失業の場合でも基本手当が支給されることとなります。
一方で個人事業主やフリーランスの方は、雇用保険と同等の社会保険制度がないため、こういった失業リスクについては、自身で対策を練らないといけません。
なお、社会保険制度はないですが、全くリスク対策が取れないわけではなく、以下のような共済金制度を利用してリスクヘッジを行うことが可能です。

 

共済金制度について
制度名運営先掛け金支給要件その他
小規模企業共済独立行政法人
中小企業基盤整備機構
月々1,000~70,000円まで
自由に設定可能。
※確定申告時に全額を所得控除できる
【共済金A】個人事業を廃業した場合
【共済金B】65歳以上で180か月以上掛金を払い込んだ方は老齢給付として支給する
掛金の範囲内で事業資金の貸付制度が利用できる
経営セーフティ共済独立行政法人
中小企業基盤整備機構
月々5,000円~200,000円まで
自由に設定可
※上限800万円まで
※全額経費算入で節税可能
①取引先の倒産が条件
②無担保・無保証人で納めた掛金の最大10倍(上限8,000万円)の資金借入れが可能。
解約した場合でも、解約手当金を受け取ることが可能。
※掛金12ヵ月以上納めていることが条件

なお「小規模企業共済」については、もともと主旨が個人事業主向けの退職金制度であり、「経営セーフティ共済」については、中小規模企業の連鎖倒産を防ぐことを防止するための制度であることから、雇用保険という保険システムとは異なり、万一の倒産リスク=失業リスクに備えるために、掛金を積み立てることが前提となります。費用対効果からすれば圧倒的に雇用保険の方が有利ではありますが、リスクヘッジとしての方法としては良いかもしれません。具体的な掛け金の設定や補償内容については「資産設計の自由度」で後述したいと思います。

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