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【社労士監修】勤務間インターバル制度とは?休息時間の設定は何時間にすべきか

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【社労士監修】勤務間インターバル制度とは?休息時間の設定は何時間にすべきか

労働の生産性が重要視されている中で、昔のように「長い時間働いて入れば成果がでる」というよりは、「限られた時間の中で如何に成果を出すか」に働き方がシフトしています。

そのため企業や働く個人にとっても、現在の「労働時間の長さ」は課題になっており、その課題を解消するための方法の1つとして「勤務間インターバル制度」が挙げられますが、実際に導入している企業が少ないため、「勤務間インターバル制度」自体があまり知られていません。

そして、いざ「勤務間インターバル制度」を導入しようとなると、一番のポイントとなる「休息時間の設定方法」について、


「休息時間を設定する際のポイントは?」
「休息時間は何時間に設定するのが正解なの?」

と悩まれる方も少なくありません。

そこで今回は「勤務間インターバル制度」の中でも特に大事な「休息時間」の考え方について解説して行きたいと思います。

【この記事でわかること】
「休息時間の設定ポイントがわかります!」
「休息時間が11時間に設定するのがベストです!」

勤務間インターバル制度とは

2019年4月に「労働時間等設定改善法」が改正され、前日の終業時刻から当日の始業時刻の間に休息時間を確保する「勤務間インターバル制度」というのが企業の努力義務として規程されました。従来は労働時間の管理と言えば、就業時間である始業時刻から終業時刻までの入口から出口までを管理する手法が取られましたが、36協定等による時間外労働が法的にも認容されていることから労働時間の短縮化までに至らず、今回は就業時間外の時間を設定することで、長期時間外労働を抑制し、間接的に労働時間の短縮化を図っていくことが目的です。

「勤務間インターバル」を導入した場合のイメージは以下のとおりです。

出典:厚生労働省 勤務間インターバル制度

この「勤務間インターバル制度」については日本で導入している企業は少ないですが、今後は働く人のワーク・ライフ・バランスを保ちながら働くことができるため、企業のHR戦略でも注目されていますので、この機会にぜひ確認しておきましょう。

勤務間インターバル制度を導入するのポイント

まず勤務間インターバル制度を導入するにあたっては、会社の時間外労働の実態を把握する必要があり、もし制度を導入するにあたっては会社の実態を把握したうえで①長期時間外労働の防止と②従業員のワーク・ライフ・バランスの維持を目標としたうえで、導入を検討した方が良いものと思われます。
なぜなら長期時間外労働の防止だけであれば、制度導入よりもそれ以外の方法での検討が可能であり、また従業員のプライベート時間でもある休息時間に関する規程ですから、従業員のワーク・ライフ・バランスの考えなしでは導入しても効果的とは言えません。その点を踏またうえで、導入する際のポイントを整理していきましょう。

ポイント①休息時間を決める

まずは勤務間インターバル制度における休息時間を何時間にするのかを決める必要があります。この点においてEU加盟国は「11時間」を標準としていますが、一旦制度として導入してしまうと、前日の終業時刻が遅れた場合に当日の始業時刻をスライドさせる必要が出てきたり、当日の始業時刻をスライドした結果、所定労働時間が短縮した分を有給・無給にするのかという問題が発生し、労務管理が煩雑となることから、無理のない休息時間の設定が必要です。

ポイント②誰を対象とするのかを決める

必ずしも会社の従業員全員を対象とする必要はありません。例えば労働基準法によって労働時間の適用除外となる管理監督者を対象外とすることや、職種によって会社の一部の部門のみを対象とすることも可能ですので、会社の各業務・各職種ごとに導入を検討するのが良いでしょう。

ポイント③制度の適用期間を決める

また導入を検討する際は、必ずしも「通年」とする必要はありません。業種・職種によっては繁忙期・閑散期は異なりますので、例えば繁忙期である四半期は適用外としたり、自然災害や予想外の事故が起きた場合は適用外にすることは可能です。しかし管理職の判断のみで適用可否が決められるとなると、導入の目的である従業員のワーク・ライフ・バランスは維持できず、導入しても効果が期待できないため注意が必要です。

休息時間の設定方法

休息時間の設定については、極端に短すぎると従業員のワーク・ライフ・バランスが維持できず効果が期待できない反面、極端に長すぎると臨時的・突発的な時間外労働が発生した場合、翌日の労働時間がスライドすることにより労働時間が煩雑になるため、可もなく不可もなく設定するというバランスが大事になってきます。

EU諸国では11時間が標準タイム

1993年(平成5年)に制定されたEU労働時間指令では、24時間につき最低連続11時間の休息を与えることが義務付けられているので、EU加盟国では休息期間が11時間というのが標準タイムとなります。

助成金制度では9時間以上が目安

すでに令和2年度の取組みについて終了していますが、厚生労働省における「働き方改革推進支援助成金」においては、勤務間インターバル制度を導入した企業に対して助成金を支給していますが、その支給対象となる企業については、「休息時間数が9時間以上」というのが条件となっており、今後も助成金制度が継続されるようであれば、「9時間以上」というのが1つの目安となりそうです。

効果を求めるであれば11時間以上がベスト

勤務間インターバル制度を導入する際に、制度の適用期間・適用範囲によってその効果は様々ですが、冒頭で述べたように働く人のワーク・ライフ・バランスを目標とする制度でもあることかあらすれば、働く人の時間を大まかに分割すると、①労働時間、②通勤帰宅時間、③プライベート時間の3つに分けられます。従業員の健康管理の面からすれば③プライベート時間のうち7~8時間は睡眠時間に消費され、①労働時間は職種によって異なりますが法的上限は8時間となるため、8時間は労働時間に消費されることとなります。

さらに③プライベート時間について皆さん自身の生活をイメージしなが考えてみると、睡眠時間の他にも会社へ行く準備時間や朝食・夕食を取る時間、また趣味に費やす時間を考えると、朝1時間・夕1時間ずつは最低限必要になるため、少なくとも睡眠時間を含めると9~10時間はプライベート時間に最低限必要な時間と考えられるのではないでしょうか?

それに②通勤帰宅時間を考慮した場合、個人個人で差はありますが、都心の平均時間は片道1時間であるため1日往復2時間は通勤帰宅時間で消費されることとなります。なお通勤時間については労働時間ではないため考慮する必要がないとの意見もありますが、少なくとも通勤災害になったり、会社の指示する就業場所へ通勤するための時間であることからすれば全く考慮しないのは制度の主旨と反することになると考えられ、勤務間インターバル制度における休息時間が就業時間外=②通勤帰宅時間+③プライベート時間であるとすれば、短くとも11時間以上と設定するのが一番効果的とも言えます。

もちろん業種や職種によって様々であるため、例えば勤務間インターバル制度においていも「コアタイム」を設けて最低限インターバル時間を9時間として、「フレキシブルタイム」を設けて努力義務としてインターバル時間を11時間として規程することも可能ですので、この機会にせひ勤務間インターバル制度の導入について、個人・企業に関わらず考えてみることで、新しい働き方が見えてくるのではないでしょうか。

★勤務間インターバルと相性の良い「フレックスタイム制度」はこちら↓

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