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ワーケーション・ブレジャー導入による新しい働き方への模索

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ワーケーション・ブレジャー導入による新しい働き方への模索

日本では2020年7月に「観光戦略実行推進会議」において、新たな旅のスタイルとして「ワーケーション等を推進する方針」が政府より示され、「ワーケーション」という言葉が注目されたことから始まり、最近では大手航空会社JALやANAでも導入が始まったりと注目を浴びるようになりました。実際にまだ始まったばかりの取組みであり、初めて「ワーケーション」という言葉を知った方も多いのではないでしょうか?今回記事では「ワーケーション」についての解説と、企業事例、また今後の動向について考察していきたいと思います。

ワーケーション・プレジャーとは何か?

ワーケーションとは仕事の「WORK」と休暇の「VACATION」を組み合わせ造語であり、文字通り仕事と休暇の融合ということになります。もともとは新しい旅のスタイルとしての効果を期待して取り組みが開始されており、掘り下げていくと、従来の日本の旅行スタイルは、GWやお盆また年末年始と、特定の時期に一斉に休暇を取得する慣習があり、時期や場所が集中しやすく宿泊日数も短いといった傾向にありました。これが今回の新型コロナの影響による、密集・密接を避けるのと同時に、旅行機会を創出することで観光産業を支える取り組みとなっています。

また同様の取り組みとしては、ブレジャーというのもあり、ビジネスの「BUSINESS」とレジャーの「LEISURE」を組み合わせた造語となりますが、こちらも仕事と休暇の融合ということで、主に出張等の機会を活用して、滞在期間を延長してう余暇を楽しむスタイルとなります。

実施形態(イメージ)ワーケーション休暇型、業務型、ブレジャー業務型

出典:観光庁HP

休暇型と業務型の2種類ある

ワーケーション・ブレジャーについては、仕事と休暇のバランスによって休暇型と業務型とに分けられます。最初に「ブレジャー」については、もともと仕事における出張機会を利用した余暇・休暇であることから、業務型のみとなります。
次に「ワーケーション」については、休暇を主体として旅行先などでテレワーク(仕事)を行う休暇型と、仕事を主体として休暇のために働く場所を変える業務型の2種類あります。

テレワークとの違い

よくワーケーションというと、最近導入が促進されているテレワークと同じように考えられがちではあるものの、この2つの定義は大きく異なります。テレワークはオフィス以外の場所である、自宅やカフェ、コワーキングスペースなのどで働くことを言い、仕事そのものを意味しています。

一方でワーケーションはあくまでも仕事と休暇の融合であり、休暇を前提として自由な場所で働くことを意味しています。つまりワーケーションとは働く個人のリフレッシュと休暇取得を促進させるための働き方であり、「働く」「休む」を明確に分けずに、「休みながら働く」というあ新しい考え方となります。

ワーケーションのメリット

最近ではJAL・ANAなどの大手企業がワーケーションを導入したりと、その動向に注目されていますが、実際にワーケーションを導入することで、どのようなメリットがあるのか考察していきたいと思います。

企業側のメリット

まず企業側のメリットとしては、年次有給休暇の取得促進が挙げられます。ご存じのとおり、日本は主要諸外国と比べても有給取得率は低く、企業は従業員に対して年次有給休暇を5日取得させる義務があることを踏まえれば、有給取得率の向上に対する効果が期待できます。そして多様な働き方が認められていることで企業イメージを向上させることができ、優秀な人材の確保や採用にも結びつけることできます。また従業員とのエンゲージメントが高まることによるアイデア・イノベーション創出といった効果や、地域との関係性構築によるBCP対策・地方創成に寄与する効果も期待できます。

従業員側のメリット

次に従業員側のメリットとしては、長期にわたり休暇が取得できやすい環境になることです。例えばワーケーションによって、旅行先で仕事を行ないがら、勤務日の前後に有給を利用すれば、観光地に長期で滞在することが可能となります。また働き方の選択肢が増えることで、自立的で自由度の高い働き方を選択でき、仕事とプライベートの両立が実現可能となります。何よりも働く場所を変えることで、ストレスの軽減・リフレッシュ効果も期待でき、モチベーション向上にもつながります。まさに自分らしいワーク&ライフスタイルの実現が可能となります。

出典:観光庁HP

 

企業導入事例

現在ワーケーションを導入している企業の割合は低いですが、大手企業でも導入を進めている会社もあり、ここでは簡単に企業の導入事例について、いくつか紹介していきたいと思います。

■日本航空

日本航空株式会社(JAL)では、2015年から働き方改革を進めており、部門間で有給休暇の取得率のアンバランスさが課題となっていました。特に有給休暇の取得率については、現場部門以外の社員の取得率が低い状態であり、その対策のひとつとして、2017年より休暇中にテレワークを可能とする「休暇型」のワーケーションを導入しました。結果として間接部門社員の有給休暇取得率を向上させることができ、社内調査アンケートでも従業員からの評価も良いようです。

■ユニリーバ・ジャパン

ユニリーバ・ジャパン(ユニリーバ)では、2016年に働く場所や時間を、従業員自身がが自由に選択できる新しい働き方「WAA(ワー)」(Work from Anywhere and Anytime)を導入したことにより、管理者に申請したうえで、会社としても業務上に支障がなければ、理由を問わず会社以外の場所で仕事ができるようになりました。また平日5時から22時の間なら、勤務時間や休憩時間は自由に設定でき、またフレックスタイム制のように1日の労働時間は設けずに、1ヶ月の所定労働時間のみを設けており、仮に労働時間が足りない月があった場合、翌月に調整する方法を採用しています。こちらも社内調査アンケートでは「自分で使っていく時間を主体的に選択できるようになったことが大きい。人生が変わった。「余計なストレスが軽減し、より仕事への意欲が増した」など、高評価を得ているようです。

■野村総合研究所

株式会社野村総合研究所では、2017年からワーケーションへの取り組みが始まっており、同取組みは「三好キャンプ」とも呼ばれており、徳島県三好市にある古民家で、平日は通常業務で週末は休暇を取る仕組みであり、1ヶ月間を前後2週間で区切ったうえで、延べ15~16人が参加するキャンプを年3回実施しています。この取組みの目的の1つは、社員の業務的なモチベーションを維持するため、もう1つは働く環境を変えることによって社員のイノベーションが生まれることへの期待です。まさにオリジナリティの高い取組みとも言えます。

ワーケーションに対する考え方

企業からの視点

ワーケーションについては新しい働き方であるため、まだ導入している企業も少なく、実際に積極的に導入を検討している企業もあれば、消極的な企業もいることは確かであり、ワーケーションに対する企業の考え方も様々です。一方でワーケーションを導入した企業では、福利厚生という視点から「従業員のリフレッシュ効果」に期待する声が多い一方、さらに人事HR戦略としての「優秀な人材の確保」に活かす取り組みにも発展させ、ワーケーションを経営戦略の一部とする考えを持っている企業が少なくないことがわかります。

出典:観光庁HP

従業員からの視点

ワーケーションに対する注目が集まる中で、特に働く20歳代の方のワーケーションに対する関心は高く、ワーケーションの「休暇型」「業務型」のどちらにも関わらず「リラックスできる環境」で仕事をすることへの期待が大きくなっていることがわかります。また「業務型」の場合でも日常と違う場所(環境)で仕事ができる分「リラックス、リフレッシュを求める」割合が高く、またシェアオフィスやコワーキングスペースなどで出会った人達との交流に対する期待もあることがわかります。

出典:観光庁HP

今後の取り組みへの期待

ワーケーションの導入にあたっては、従来のように「固定された場所で仕事をする」という考え方から、「自由に働く場所を決める」という考え方にシフトしていくことが必要となります。考え方をシフトするのに抵抗は付き物ですが、その分企業や従業員におけるメリットについては先述したとおりです。

なおワーケーションを導入を進めるにあたっては、「働く場所」によって制限を受けることもあり、例えば旅行先(宿泊先)の通信環境、また育児をしている人であれば受入施設(保育施設)の整備が必要となってきます。この点においてアンケート調査では、企業が受入地域・受入施設に整備してほしい点として、「セキュリティやスピード面が確保されたWi-Fi等の通信環境」が53.4%で最も高く、次いでハード面の整備に対するニーズが高いことがわかります。また従業員側のアンケートでも、「Wi-Fiなどのネットワーク環境が整い安全なセキュリティ環境下で快適なワークができるのか」が最も多く、やはり通信環境(特にセキュリティ面)に対する整備が必要不可欠となります。

またワーケーション自体がテレワークを前提としていることからしても、通信環境におけるセキュリティの問題、またワーケーションにおける費用面の負担割合の問題、また労務管理や人事評価制度の見直しなど、人事労務面からの取り組みも同時並行で必要となります。
この点を踏まえれば、ワーケーションの導入そのものが目的とならないよう「働く個人に合った自由な働き方設計」と「企業の人事HR戦略」としての2つの側面から検討していき、企業と従業員との相互理解を得て、実現していくのが一番の理想かもしれません。

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