年金受給額の世代間格差はなぜ起きるのか?

社会保険

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今回は以前からSNSやニュースで話題となっていた「年金受給額の世代間格差」について考えてみたいと思います。これは皆さんの記憶にも新しいことかと思いますが、簡単に言えば1970年代以降に生まれた人は、払った保険料に対して支給される年金額が少なく「払い損」となるというものです。例えば1950年代生まれの人が1500万円程の「もらい得」になるのに対して、1980年代生まれの人は逆に1500万円程の「払い損」となる(それ以降生まれの方はさらに払い損となる)というものであり、かなりインパクトの強い内容でした。

また試算する際の前提条件は異なるものの、以下の表(厚生労働省の財務検証結果レポート資料)からも、払い損までとはいかずとも世代間によって格差が生じるという試算結果になっていることがわかります。

※出典:厚生労働省 H26年財政検証結果レポート

・この世代間格差は解消されるものなのか?

誰もが自分は損をしたいとは考えないものであり、できれば得したい、得をせずともプラマイゼロぐらいであれば、現状の年金制度を受け入れることはできるでしょう。(私自身も払い損となる世代なので、複雑な心境ですが・・・)

しかし、この世代間格差は、年金制度の構造上「必ず起こりうる現象」であり、それは年金制度そのものが「積立方式」ではなく、「賦課方式」を採用しているからです。2つの主な違いは以下のとおりとなります。

【積立方式】=自らが現役時代に支払った保険料が原資となり、積立・運用されていき、将来その貯蓄(運用)された資産を切り崩し消化していくもの。  【賦課方式】=現役世代が払っている保険料は、高齢世代に支給される年金の原資となり、消化されていくもの。(自らのために貯蓄されるものではない)

よって、保険料を払う側と年金を受け取る側との人口バランスは、時代ととも変化していくものであり、当然そのバランスが崩れれば、払い損となる世代が出てきてしまうことは、何とも不条理ではあるものの、避けては通れない道となります。

・なぜ賦課方式を採用しているのか?

今までの話からすれば、今すぐ賦課方式をやめて、積立方式に変更すれば良いとの声が聞こえてきそうですが、賦課方式を採用することで生じるメリットもあります。

1つは、「実質的価値のある給付の実現」です。積立方式の場合、今現時点で100万円の積立を行い、50年後に現状維持の100万円が受給できたとしても、50年後に物価が上昇して、実質的な価値が今の80万円ぐらいしかなければ20万円の損となります。その分生活が困窮したり、自らの努力で補填しなければならなくなります。逆に賦課方式であれば、現役世代の保険料を原資としたうえで、物価水準と連動した年金が受給できるため、その心配はありません。

もう1つは、「私的扶養の軽減」です。簡単に言えば、高齢となった親の扶養(金銭的な援助を行う必要)が減るということです。親の面倒を見なくて済むというドライな感じがするので、もう少し掘り下げて言えば、積立方式の場合、当然に親の年金も積立方式なわけですから、その積立・運用結果に伴い親の年金受給額も異なってきます。親の年金受給額が少なければ、その子供(現役世代)が個人で金銭的な援助、すなわち私的扶養を行う必要が出てきます。当然親の扶養を行う現役世代にも配偶者や子供がいれば、家計が圧迫されて生活が困窮するため、現状の年金制度(賦課方式)による社会的扶養(現役世代全体で高齢世代全体を守る)を行うことで、そのリスクを未然に防止するができます。

当時(年代)大卒初任給 平均月収 物価(バター200gあたり)
1960  18,458 142
1970 30,600 58,400 160
1980114,500191,700 305
1990169,900283,800 333
2000196,900331,300 325
2010200,300323,600 369
(単位:円)

上記は「厚生労働省の賃金構造基本統計調査」と「総務省の小売物価統計調査」のデータをもとに、年代毎にその当時の月収や物価等を表にまとめたものです。見ればわかりますが、例えば積立方式の場合だと、1970年当時に現役世代の人が月収の1/4、約15,000円(今の現役世代の人は、月収の1/4、約80,000円を想像してみてください)を積み立てた場合でも、原資はあくまで15,000円であり、物価が倍に上がったとしても年金受給額が倍の30,000円にはならないため(今の現役世代の人は今80,000円で買えたものが、将来は160,000円かかることを想像してみてください)、運用益でその差が埋まれば良いですが、埋まらなければ、当然その子供や家族が金銭的な私的扶養を行う必要が出できます。

もちろん私的扶養には限界があるため、日本の国としては社会保障を条文上謳っている以上、生活に困窮している積立不足の年金受給者に対しては、何かしらの保障を行う必要があり、その場合の財源は主に税金となるということは容易に想像がつきます。つまり積立方式が採用されていた場合、個々の自己責任による積立・運用であることからすれば、今にあるような世代間格差は発生していなかったものの、日本における過去の月収や物価の推移からすれば、今の年金受給者が現在の物価に耐えうるだけの月収を過去に稼ぐことは非常に考えにくく、その分生活に困窮する高齢者の人数は今より必然的と多くなります。結局のところその社会保障は税を財源に行われることからすれば、現代の現役世代の負担は「保険料」から「税」と名前を変えるだけであり、私的扶養による負担額の増大も踏まえれば、負担自体が減ることにはならないと考えられます。

・今後の年金制度を考えるにあたって

以上のことを踏まえ、現在の年金制度が賦課方式を採用していることからすれば、少子高齢化(超高齢者化社会)が進んでいる日本においては、当然現役世代の負担が大きく、日本の人口バランスの変化に伴う世代間格差は当然に発生するものであることから、ただ単に金銭的な損得勘定のみをもって、年金制度の是非を問うことは難しいと言えます。

ただ1つ誤解を恐れずに言えば、現状の年金制度を維持し、また世代間格差を是正するための方法としては、社会保障の観点からすれば「将来の現役世代を増やす」=「子供の数を増やす」ことに他ならないということです。

ただしこれは女性だけの問題ではなく、老若男女・個人法人を問わず社会全体としての問題であり、今後は子供を産みやすい環境、育てやすい環境を社会全体として作り上げていくことが求められます。現在はただでさえ、今の年金制度を維持するために労働力人口(現役世代)を増やそうと、女性活躍推進の名のもとに女性も労働力の一員として考えられるようになり、逆に男性も家事・育児への積極的参加が求められるようになったことから、男女ともに個々の「仕事と生活との調和・バランス」を保つにも必死だと思われます。一方で、社会全体としてはまだ「女性は家事・育児が基本」「男性は仕事が基本」との既成概念が根強く残っているのもまた事実であり、この既成概念は前述したとおり、高度経済成長時期において、社会全体として如何に効率よく生産性を上げるかのために考えられたものであることからすれば、未だにこのような考え方が根本にあるのは個人的に非常で残念でなりません。

よって、今後は個人において、また社会全体としても「子供を産みやすく・育てやすい環境を如何に効率よく作り出していく」のかを考えていかなくてはならず、それも「器」ではなく「中身」を変えていかなければ、この世代間格差を是正することは難しいのではないかと思われます。

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