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【社労士監修】在職老齢年金の総報酬月額相当額とはいつの報酬で決まるのか?

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【社労士監修】在職老齢年金の総報酬月額相当額とはいつの報酬で決まるのか?

今では定年延長によって、65歳を過ぎても働く人が多くなってきており、働きながら年金を受給することで、在職老齢年金の仕組みにより、年金が満額もらえるのか?それとも減額されてしまうのか?気になる人もいるのではないでしょうか?

在職老齢年金については、働いた分の収入(月収)ともらえる年金額(月単位)によって、実際に年金が減額されるかが決まりますが、実際に支給されるとなると、

「あれ?ネットで調べていた計算式と金額が合わない」
「思ったよりも、もらえる年金が少なかった」

と思われる方も多いのではないでしょうか?

実際のところネットやパンフレットなどで案内されているのは、わかりやすく解説されているために、一部具体的な説明が省略されている場合があります。

今回は社会保険労務士である著者が、在職老齢年金の計算式における「総報酬月額相当額」について、分かりやすく解説していきますので、ぜひ参考にして見てください。

【この記事でわかること】
「ネットでは詳しく解説されていない、在職老齢年金の正しい計算式がわかります!」

在職老齢年金の仕組み

在職老齢年金というのは、「働くことによる収入がある場合は、年金額を調整(減額または支給停止)します」という仕組みになります。

もともと年金制度の考え方として、加齢によって身体が衰えてしまうと若い時程を収入を稼ぐことができないことから、それを補填するのが年金の役割という考えが前提としてあるため、逆に言えば「年齢に関わらず稼げる人は年金に頼らず稼いでください」と言い換えることもできます。

昔は年齢に関わらず会社員として働いていると一切年金がもらえないという時代もありましたが、必然的に若い時よりも収入が減っていることや、また収入の多い人と収入の少ない人との公平性が保てなくなることか、「実際に稼いでいる収入」と「もらえる年金額」を考慮したうえで、年金額を調整(減額または支給停止)していくというのが、今の在職老齢年金の仕組みとなります。

★在職老齢年金の仕組みについてはこちらで分かりやすく解説しています

 

在職老齢年金の計算式

減額される年金つまり収入があることによって支給調整される老齢厚生年金のことを「支給停止額」と言い、65歳以上からの老齢厚生年金については、計算式は以下のとおりとなります。

条件 支給停止額の計算方法
基本月額+総報酬月額相当額 ≦ 47万円 0円(年金は全額支給)
基本月額+総報酬月額相当額 >47万円 (基本月額+総報酬月額相当額-47万円)× 1/2

基本月額とは、老齢厚生年金(報酬比例部分)の1ヶ月あたり金額であり、総報酬月額相当額というのは、「その月の給与(標準報酬月額)」と「その月以前1年間の賞与(標準賞与額)÷12ヵ月」を足した額となります。

少し詳しく解説していきましょう。

■基本月額とは

基本月額とは、老齢厚生年金(報酬比例部分)の年金額を12で割って、月額ベースに換算したものとなります。

なお、老齢厚生年金の年金額は主に報酬比例部分と加給年金部分に分けられますが、加給年金部分(一定の配偶者や子がいる場合に支給される年金)は含まれないため、報酬比例部分だけでいくら年金をもらえるのかをチャックしておく必要があります。

《基本月額の計算式》
例:老齢厚生年金(報酬比例部分)=60万円の場合

⇒ 基本月額 は 60万円 ÷ 12ヶ月 = 5万円となります。

■総報酬月額相当額とは

総報酬月額相当額とは「その月の標準報酬月額」と「その月以前1年間の標準賞与額を12で割った金額」の合計額となります。
「標準報酬月額」とは以下の表のとおり、月収(給与)に応じて設定されている金額で厚生年金保険料の基となるものです。また「標準賞与額」とは賞与(ボーナス)を基にして設定されている金額で、こちらも厚生年金保険料の基となります。※「標準賞与額」については実際の賞与の1000円未満を切り捨てた金額で、1月あたり150万円が上限となります。

《総報酬月額相当額の計算式》
標準報酬月額 30万円、標準賞与額 120万円の場合
⇒総報酬月額相当額は 30万円 + 120万円÷12 = 40万円となります。

なお、総報酬月額相当額とは、総報酬制とも言われており、厚生年金保険については平成15年4月から導入された仕組みです。それまでは賞与(ボーナス)は厚生年金保険では対象外となっており、例えば同じ年収800万円でも、「月収600万円+賞与200万円の人」と「月収800万円+賞与なし」の人では、納付する保険料も違えば、もらえる年金も違っていおり平等性に欠けていました。場合によっては会社が納付する保険料を下げるため、賞与の割合を高くするといった問題もあり、総報酬制が導入されることとなりました。

標準報酬月額にはタイムラグが発生する

先述したとおり「総報酬月額相当額」は「その月の標準報酬月額」によって金額が変わってきますが、この「その月の標準報酬月額」というのは、必ずしも「その月の月収」をもとに計算されていないという点に注意が必要です。

《標準報酬月額の定時改定》

標準報酬月額は、月収に応じて設定されているというのは先述したとおりですが、標準報酬月額については1年に1回「定時改定」というのがあり、常に月収に応じた社会保険料を徴収するために、届出をする必要があります。

なお、定時改定というのは毎年7月に行われ、その年の4~6月の平均月収に応じて標準報酬月額を設定し、その標準報酬月額はその年の9月~翌年8月まで適用されます。

つまり、その年の9月から翌年8月の標準報酬月額は、その年9月から翌年8月の月収に応じてではなく、あくまでもその年4月~6月の平均月収に応じて設定されることになります。

仮に7月から減収となった場合でも、あまり大きな変動でなければ、4~6月の高い平均月収に応じて標準報酬月額が設定されることとなり、その逆も同様になります。なおあまりにも大きな変動がある場合は「随時改定」というのがあり、適宜標準報酬月額の見直しがされますが、こちらも大きな変動があった月から3ヵ月後に改定されるため、若干タイムラグが生じることになります。

標準賞与額はその月含めて過去12ヶ月

また標準賞与額については、過去1年間の賞与額をベースに算定していきますが、この過去1年間というのはその月を含めて過去1年間となりますので、仮に9月の総報酬月額相当額を計算する際は、前年8月から今年9月までの標準賞与額の合計を12で除して、算定することになります。

在職老齢年金のもらい方

先述したように標準報酬月額についてはタイムラグが発生することから、特に注意が必要なのが、65歳で定年を迎えた場合、定年延長で引き続き雇用されるのか?それもと定年退職扱いで再雇用されるかで、適用される標準報酬月額が異なります。

標準報酬月額とは保険料の算定の基礎となる一方で、もらえる年金額の算定の基礎となるため、将来の働き方や資産設計を見据えて十分にチェックしておく必要があります。

★定年後再雇用と定年延長、社会保険料と年金の違いについてはこちら↓

★年金改正「在職定時改定」について知りたい方はこちら↓

★定年再雇用と年金の関係性について知りたい方はこちら↓

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