目次
【社労士監修】すぐわかる傷病手当金の支給期間~令和4年1月から通算します~
病気になったりケガをした時に、仕事ができなくなることで収入が減ってしまうのは非常に悩ましい問題です。
そのような時に助けになるのが、健康保険における『傷病手当金』であり、健康保険に加入している会社員の方であれば、病気やケガの時でも収入が保障される仕組みになっています。
しかし、どのような場合でも保障されるとは限らず、『傷病手当金』について調べてみると
「傷病手当金はいつまで支給されるの?」
「待期期間中は支給されないの?」
と、分かりづらい点もあるのではないでしょうか?
今回記事では、健康保険における傷病手当金について、支給期間を中心にして解説していきますので、し傷病手当金への理解を深めたうえで、足りない部分については民間保険会社の就業不能保険等で補うなど対策を練っていきましょう。
【この記事でわかること】
「傷病手当金の支給期間が簡単にわかります!」
「支給期間を知ることで、民間保険の加入についても無駄が無くせます」
傷病手当金の支給期間について
まず、傷病手当金のついては支給されるための条件として、「待期期間」が完了していることが含まれているため、まずは「待機期間」から解説していきたいと思います。
待期期間を正しく理解する
傷病手当金は、業務や通勤以外での日常生活における病気やケガを対象としていますが、会社を休んで収入が無かったとしても、すべてのケースで支給される訳ではありません。
傷病手当金については、ある程度の病気やケガで長期にわたり治療を要する状態を想定しており、逆に軽傷・軽症状で治療をあまり要さない状態は想定していません。そのため傷病手当金については、仕事を休んだ日から継続した3日間の待期機間が設けられており、その後の4日目以降も仕事に就けなかった日に対して支給されます。なお、この待期期間には有給休暇取得日や土日祝日の公休日も含まれるため、金曜日から仕事を休んで土日が公休日だった場合は、金土日の3日間で待機期間が成立するので、月曜日以降から傷病手当金が支給されることとなります。
支給期間は最長で1年6ヵ月
傷病手当金が支給される期間は、同一の病気やケガに対して、支給が開始された日から起算して最長で1年6ヵ月となっています。
ここで大事なポイントとしては、実際に会社を休んだ日が1年6ヵ月という意味ではなく、傷病手当金が初めて支給された日から1年6ヵ月後までが支給対象期間になるという意味です。つまり、その間に会社に復帰した期間があっても支給対象期間が延長されることはありません。
令和4年1月から支給対象期間が通算される
しかし、法改正によって令和4年1月からは、この支給対象期間が通算されることになります。
従来は、支給対象期間である1年6ヵ月間のうち、1年間は会社を休んで残りの6ヵ月は会社に復帰していた場合でも、傷病手当金が支給されてから1年6ヵ月を経過すると自動的に支給も打ち切られていましたが、法改正後は1年6ヵ月を経過したとしても、残りの6ヵ月(会社に復帰していた期間)について再び会社を休んだ場合は、支給対象期間を延長して傷病手当金は支給されることになります。
支給期間中は原則給与がないことが条件
傷病手当金は、病気やケガで仕事を休んでいることを前提としているため、支給期間中は原則給与を受けていないことが条件となります。ただし、無収入という意味ではなく、一部給与の支払いがあったとしても、その額が傷病手当金よりも少ない場合は、その差額分が支給されることになります。
仕事に復帰した後の傷病手当金について
病気やケガについて治療を受けていれば時間の経過とともに回復していくので、支給対象期間の1年6ヵ月を待たずに会社へ復帰するケースもあります。
会社に完全に復帰した場合は、「もらえる給与」>「傷病手当金」となるため、傷病手当金はその時点で支給されなくなります。なお会社に一部復帰した場合で「もらえる給与」<「傷病手当金」の場合はその差額分が傷病手当金として支給されます。
なお、復帰後に症状が悪化したため再び会社を休む場合、同一の病気やケガであれば、支給対象期間の1年6ヶ月間を経過するまでは再び傷病手当金が支給されることになります。
また先述したとおり、会社に復帰しても復帰しなかったとしても、傷病手当金は支給された日から起算して1年6ヵ月を経過した時点で打ち止めとなりますが、令和4年1月以降は、1年6ヶ月経過後も仕事を休んだ場合は、休んだ期間が通算して1年6ヵ月に達するまでは傷病手当金が支給されることになります。
★病気が再発した場合の傷病手当金についてこちら↓
会社を退職した場合の傷病手当金
次に、傷病手当金が支給されている間に、会社に復帰できないまま会社を退職することになった場合、傷病手当金はどうなるのでしょうか?
傷病手当金については、退職後においても引き続き就業不能な状態が続いていれば、支給対象期間(1年6ヶ月)のうち残りの期間については支給されることとなりますが、以下の条件が必要となります。
【退職後も傷病手当金が支給される条件】
- 健康保険への加入期間が退職日までに継続して1年以上あること
※健康保険任意継続の被保険者期間を除く- 退職時点で傷病手当金が支給されている、または支給条件を満たしている
なお、ここで注意すべきポイントは退職日に会社に出勤した場合です。会社に出勤した時点で傷病手当金が支給されなくなるため、上記の条件を満たさなくなり、退職後は傷病手当金を受け取ることができません。また退職後に新たに会社に就職して仕事復帰した場合もその時点で支給打ち止めとなり、再度仕事を休んだとしても傷病手当金が再び支給されることはありません。
傷病手当金は給与の約3分の2
傷病手当金の支給額については給料の約2/3となります。実際には給与そのものから計算されているわけではなく、給与(額面)から標準報酬月額(健康保険料の基礎となる収入)を割り出して、以下の計算式を元に計算されます。
給与の2/3というと少し心細い感じもしますが、給与(額面)≒標準報酬月額であり、給与(額面)とは所得税・住民税・社会保険料控除前の金額となるため、人によって差はあるものの実際の手取り収入としては80~90%程となります。(傷病手当金自体は非課税となります)
また傷病手当金については、土日祝日などの公休日も支給対象となります。
★具体的な金額を知りたい方はこちら↓
傷病手当金がもらえないケース
先述したとおり、傷病手当金について、仕事に復帰して給与がもらえる場合は原則として支給されませんが、それ以外にも年金や他の保険給付が受けられる場合も支給されない場合があるので、念のため確認しておくと良いでしょう。
障害厚生年金・障害手当金がもらえる場合
傷病手当金が支給される原因となった病気やケガが重症だった場合、厚生年金保険における障害厚生年金や障害手当金が支給されるケースがあり、この場合傷病手当金は支給されません。なお障害手当金の場合は、傷病手当金の合計額が障害手当金額に達するまでの間、傷病手当金は支給されないこととなります。
老齢厚生年金がもらえる場合
退職後に引き続き傷病手当金が支給されている場合において、同時に老齢厚生年金を受給できる場合は、傷病手当金については支給されません。
労災保険からの支給がある場合
業務中や通勤途中のケガで仕事を休んでおり、労災保険から休業補償給付を受けている場合は、仮に日常生活において病気やケガで仕事を休んだ場合でも補償が重複してしまうため、その期間中は傷病手当金は支給されないこととなります。
出産手当金がもらえる場合
出産手当金を同時に受けることになった場合も重複補償となるため、出産手当金の支給が優先され、傷病手当金は支給されないこととなります。
最後に
最後に、傷病手当金の支給期間について簡単にまとめますと、
- 待期期間中(仕事を継続して3日間休んでいる間)は支給されない
- 傷病手当金の支給期間は最長1年6か月まで(※令和4年1月以降は変更)
- 支給期間中は原則給与がないこと(給与が傷病手当金より少ないときは差額支給あり)
- 出産手当金や障害厚生年金などから給付金がある場合は支給停止や差額支給がある
となります。
実際に病気やケガの症状によって仕事を休む期間も異なりますが、一番心配なこととしては、長期にわたって仕事を休まざるを得ない場合で、傷病手当金の支給期間を超えてしまった場合ではないでしょうか?
この場合は民間保険会社で販売しているの就業不能保険や収入保障保険等でリカバリーしておくことも必要となるため、心配な方は最寄りの保険代理店やFP(ファイナンシャルプランナー)に相談されてみてはいかがでしょうか?
この記事へのコメントはありません。