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【社労士監修】転勤拒否して退職した場合、どうして自己都合になるのか?

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【社労士監修】転勤拒否して退職した場合、どうして自己都合になるのか?

働き方改革に伴い、在宅勤務やテレワークが当たり前となった今、転勤の必要性について改めて見直す動きも出ています。またワークライフバランスも重視されるようになり、転勤のない働き方を選択する人も増えてきました。

一方で業界や職種によっては今でも転勤が当たり前の会社もあり、年度末に転勤の内示を受けたという方も多くいらっしゃると思いますが、会社から転勤命令を受けた場合、家庭や健康面での事情から、転勤を拒否または辞退しなくてはいけないケースもあり、

「家庭の事情により、転勤は拒否できないのか?」
「転勤を拒否したら、クビになるの?」

と悩まれる方も多いのではないでしょうか?

ここでは、転勤命令を拒否できる場合・できない場合、また転勤拒否による退職が自己都合退職になるのか否かについて解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

【この記事でわかること】
「転勤を拒否できる場合・できない場合がわかります!」
「転勤を拒否して退職した場合、自己都合退職なのか会社都合退職なのかがわかります!」

そもそも転勤とは?

一般的に言われてる「転勤」とは、会社内における従業員の配置転換を意味しており、職務内容(従事する市仕事)や勤務場所の変更がこれにあたりますが、そのうち居住地の変更(住所変更)すなわち引っ越しが伴うものが、一般的に「転勤」と言われているものになります。

これは日本の雇用文化として、終身雇用を前提としていることや、また会社内における事業所ごとの人員調整(人員の過不足)は内部労働市場(会社内)を通じて人員を調達することで解消されることが多く、これが「転勤」が生まれた背景となります。

転勤命令はなぜ断れないのか?

日本の雇用文化を踏まえて、日本企業においては「転勤」を前提とした雇用が多く、雇用契約は就業規則で定めるところに因るため、以下のとおり就業規則で転勤命令を規程している会社が多いのが実情です。

【就業規則における規程例】

第〇条 配置転換
会社は、業務上必要がある場合に、労働者に対して就業する場所及び従事する
業務の変更を命ずることがある。
2 会社は、業務上必要がある場合に、労働者を在籍のまま関係会社へ出向させること
がある。
3 前2項の場合、労働者は正当な理由なくこれを拒むことはできない。

つまり、就業規則に定められている以上は、原則として会社から転勤命令があった場合は、社員はこれを拒否できないこととなります。

なお、転勤命令は正社員に対するものが一般的ですが、今では地域限定正社員といった転勤のない正社員を採用する会社や、そもそも転勤がない会社もあります。

もし転勤のない働き方を選択する場合は、求人情報における転勤の有無を確認することが大事です。また自分の会社は転勤があるのか確認したい場合は、就業規則を確認するのが良いでしょう。

転勤を拒否できる場合とは?

一方で労働契約法に基づき、雇用契約すなわち労働契約というのは「仕事と生活の調和」すなわちワーク・ライフ・バランスに配慮した内容でなければならないとしており、また権利の濫用は禁止されていることからも転勤命令の際にはその必要性と妥当性が問われることとなります。

簡単に言えば、①転勤が業務上必要なものなのか?②転勤による社員の生活上の不利益はどの程度のものなのか?、この2点を踏まえたうえで、転勤の妥当性が判断されることとなり、転勤が妥当なものであれば転勤を拒否することはできません。(拒否できたとしても懲戒処分となる可能性が高いでしょう)

逆に転勤による社員の生活への支障が大きく、また会社がそれに対する配慮や手当等がない場合は、転勤を拒否できる可能性が高いと言えるでしょう。

転勤命令を断ることができる事例

実際のところ、転勤命令が就業規則に規程されている以上は転勤は拒否できないため、転勤命令を断ることができるのか?断ることができないのか?の二択の判断になると思います。

ここでは転勤を断ることができる事例について、いくつか紹介していきます。

育児や介護が必要な場合

親の介護や子供の育児に支障が出る場合は、基本的には転勤命令を断ることができます。

例えば、夫婦共働きで2人とも正社員としてフルタイムで働いている場合、仕事との兼ね合いから交代で保育園への送迎を行っている夫婦も多く、どちらか1人が欠けてしまうと保育園の送迎(育児)に支障が出てくることが想定されます。また親の介護についても、介護施設への入所が難しく、家庭で介護の世話を行っている場合も同様です。

ただし、すべてのケースで断ることができるわけでなく、会社が生活への支障を考慮し、転勤先での保育所手配や介護施設の紹介、また共働きの場合は配偶者の勤務先紹介など、支障に対する配慮や解決策がある場合は断ることができないこととなります。

就業規則にない場合

転勤命令については就業規則に規程されていることが前提であり、就業規則を根拠として会社は転勤命令を出すことができます。

逆に言えば、就業規則に規程されていなければ、会社は一方的に転勤命令を出すことはできず、転勤が必要な場合は、社員から個別に同意を得る必要があります。

もし同意を得ることなく転勤を強制した場合は、労働契約法に基づく権利の濫用にあたるので、転勤命令は断ることができます。

地域限定正社員の場合

会社に採用された時に、勤務地が限定されている場合もあります。この場合は労働契約や雇用契約においても就業場所の変更はないことになりますので、仮に会社から転勤命令があった場合は断ることができます。

この場合、もし勤務地限定採用ではあるものの、転勤することに特段問題がない場合は、会社と合意することで転勤は可能となります。

通勤が困難となる場合

転勤は住居地の変更(引っ越し)があることを前提としていますが、住居地の変更を伴わない転勤というのもあります。

この場合、住居地が変わらず勤務場所が変更となることで、通勤手段や通勤経路が変わり、ついては通勤時間に影響が出てきます。

通勤時間が短くなる分には問題ないのですが、通勤時間が長くなる場合で生活に支障が出る程度(概ね往復で4時間以上の通勤時間)であれば、断ることもできます。

これは仕事と生活との調和の中で、通勤時間(4時間以上)と労働時間(1日8時間)を含めると、1日うちのプライベート時間がほとんど無いことになり、精神面・健康面への影響が危惧されるためです。

会社の嫌がらせの場合

転勤命令の理由が、気に入らない社員を飛ばすためや報復人事など、動機が不当であり業務上必要のない転勤の場合は断ることができます。

これば転勤命令が権利の濫用であるものと判断されるので、会社との話し合いで解決しない場合は社会保険労務士や弁護士に相談するなどの対応が必要になります。

転勤命令を断った場合のデメリット

これまで転勤命令を断ることができる事例を紹介してきましたが、正社員については就業規則で規程されている以上、原則として転勤命令を拒否できず、例外的に転勤命令を断ることができるに過ぎないという点に注意する必要があります。

つまり、転勤命令を断ることができたとしても、「懲戒処分」の対象となる可能性があり、「降格処分」最悪は「懲戒解雇」となる場合もあり、その場合は退職金がもらえないことなります。また懲戒処分の対象にはならなくとも「昇進」が遅れたりするケースも多々あります。

これらのデメリットを踏まえると、転勤命令を断る際には会社にも理解してもらえるような余程の事情が必要とも言え、できれば転勤あるなしに関わらず事前に上司や会社に相談しておくのが一番良い方法とも言えます。

転勤命令を実際に断るのは難しい

繰り返しとなりますが、就業規則で規程されている以上は、原則として転勤命令は断ることができず、断ることができるには①生活に支障が生じること、②その支障が一般的に許容できないこと、③その支障に対して会社からの配慮や解決策がないことが条件となります。

過去の事例を参考にしてみると、

①転勤により通勤時間が長くなり、生活(子供の保育園の送迎)に支障が生じたが
②通勤時間が1時間長くなる程度であり、一般的には許容できる範囲
⇒結果として転勤命令の妥当性が認められた。

「ケンウッド事件」(最高裁第三小法廷判決、平成12年1月28日)

①共働きで3人の子供がいる女性が転勤により生活に支障(家族との別居)が生じたが
②夫または両親(祖父母)の援助による養育が可能であり、また転勤先と自宅がそれほど遠距離ではなく相当回数の帰省が可能な状況であり、一般的に許容できる範囲
③また会社からは同じ会社に勤務する夫にも転勤の打診(解決策の提案)をしていたことから
⇒結果として転勤命令の妥当性が認められた。

「JR東日本 東北自動車部事件」(仙台地裁判決 平成8年9月24日)

のように、転勤命令を断ることができるには、比較的ハードルが高いとも言えます。

つまりハードルが高いうえに、断った場合のデメリットを考えると、転勤命令を拒否するのは現実的に厳しいとも言えます。

転勤拒否による退職は「自己都合退職」

就業規則で規程がある以上は、転勤を拒否して会社を退職した場合は自己都合退職となります。また転勤を拒否したことによる懲戒解雇となった場合も自己に責に帰すべき退職となり、自己都合退職となります。

自己都合退職の場合は、雇用保険における基本手当(失業手当)については3ヵ月間の給付制限があり、その間は給付を受けることができないので、退職時には注意が必要です。

一方で、転勤拒否の理由が①転勤による生活への支障が生じること、②その支障が一般的に許容範囲を超えること、③支障に対する配慮・解決策がない場合は、会社都合退職となる可能性があります、この場合は雇用保険における基本手当(失業手当)については給付制限がなく、退職時から給付を受け取ることができます。

例えば、夫婦共に正社員としてフルタイムで働いており、子供の保育園送迎を交代で行っている場合で、①夫が転勤によって子供の保育園送迎ができなくなり生活(育児)に支障が出てしまい、②両親の援助が受けれず保育園への送迎が事実上困難となり許容できない状況、かつ③会社から保育所手配等などの配慮や解決策もないことから、やむを得ず退職した場合は、会社都合退職となる可能性がありますので、その場合は公共職業安定所に相談してみると良いでしょう。

転勤がない会社へ転職しよう

転勤命令については、原則として拒否できないことは先述したとおりですが、最近では働き方改革が進んでおり、育児介護休業法の配慮義務規定(26条)にもあるように、転勤により就業場所が変わることで子の養育や家族の介護が困難となる労働者がいるときは、その状況に配慮することが企業に義務付けられており、転勤について見直す動きも出て来ています。

今では「転勤がない」と謳っている会社も多く、以前にように転勤が当たり前の時代から徐々に転勤のない時代へと変化してきており、転勤の有無は自分で決められる時代にもなりました。

もし転勤のある会社で働いている場合、自分が目指す働き方とは違うと思ったら、転職のない会社へ転職することも大切です。

今転勤がなかったとしても、いつ起こるのかわからないのも転勤です。今のうちから転職について考えてみるも良いでしょう。

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