働き方改革が進み、今では副業する会社員の方も増えてきています。その場合「自分がやりたい仕事をしてみたい」「自分の力を試したい」「独立して悠々自適にやってみたい」といったように、個人事業主やフリーランスとして起業する方もいると思いますが、
いざ起業しようと思っても、
「起業って何から始めれば・・・」
と思う方もいるのではないでしょうか?
私自身も現在副業としてではありますが、社会保険労務士事務所を開業(起業)しており、今回記事では初めて「起業したい」と思った方向けに「起業するための手順と周辺知識」について紹介していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
【この記事でわかること】
「起業するための5つの手順がわかります!」
①なぜ起業したいのか?理由を考えよう
起業というのは、会社員と異なり、自分で事業を行うことになるので、自分の裁量で自由に事業を行える一方でそのすべての責任を負うことになります。そのため事業やビジネスを立ち上げるためは「起業するという覚悟」とそのための「明確な理由」を見つけておくことが大切です。
例えば、会社員として組織に属している方で「自分のやりたいことを仕事にしたい」と思っている場合、
・実は会社でも自分のやりたいことが仕事にできる場合
・趣味やボランティアとしてもできる場合
とあえて、起業以外の方法でもできるケースがあります。
起業した場合でも会社員で働く場合と同様に、仕事上のトラブルや悩みは付き物であり、個人事業主やフリーランスとして起業し始めの時は、身の回りに相談できる人もあまりいないので、そのような苦境を乗り越えるためにも。起業するための「明確な理由」を見つけておくと良いでしょう。
紙に書いて文字にする
「明確な理由」を見つける方法はいくつかありますが、頭の中で考えても思考が堂々巡りとなって上手く整理することができないため、「紙に書いて文字にする」ことから始めましょう。なお、紙に書いて文字にする場合、じっくり吟味しながら1つ1つ書くというよりは、思いついたことをそのまま書き出すことがポイントです。
例えば「なぜ起業したいのか?」について、紙に書いて文字していく場合、
「実業家ってかっこいい」
「社長になりたい」
「自分の裁量で仕事がしたい」
「悠々自適に仕事がしたい」
「チームワークが苦手なので1人で仕事したい」
…etc、
特に正解不正解はないので、思いついたまま紙に書いていくことで、「自分ってこう思っているんだな」と客観的に自分の価値観を認識することができ、また価値観や考えを整理することもできるので、その中自分なりの「明確な理由」というのが見つけやすくなります。それ以外にも起業のメリット・デメリットという視点で紙に書いていくのもオススメです。
イメージ画像をいつも見えるところに
また文字以外にも、起業してからのイメージ画像(未来像)を、いつも目の見える壁に貼っておく、また携帯の待ち受け画像にしたりする方法も有効です。これは人間の認識方法(情報認識)というのは「視覚」による認識が圧倒的に多いため、常に視認できる状況にしておくことで、起業への意識を高めることができます。
例えば、
「美容師として起業したい」⇒美容師の画像や、美容室の画像
「起業しておしゃれな事務所で働きたい」⇒おしゃれな事務所の画像
「起業して社長になりたい」⇒尊敬する実業家の画像
…etc
一見「そこまで?」と思われる方もいると思いますが「起業しよう!」と決断したものの途中で挫折をする方はかなり多いです。理由は様々ですが、今している仕事や日常生活で多忙になると優先順位が低くなり、起業に対する意識が徐々に薄れていくことが主な原因です。意識を常に持っておくためにもイメージ画像は常に目に見えるところに保管しておきましょう。
②商品・サービスとマーケットを考えよう
事業計画を練る場合、どのような商品・サービスをどのようなマーケット(顧客)に対して提供するのかを予め考えておくことが必要です。
例えば「パン作りが好きなのでパン屋として起業したい」と考えた場合、商品は「パン」となり、その場合のマーケット(顧客)は「パンを食べたい人」「パン好きな人」になります。もう少し掘り下げていくと、パンであれば出来立てがおいしいので店舗を構える必要が出てきます。そうすると自ずと店舗の立地条件を考える必要が出てきて、それが学校の近くとかであれば「学生でパンを食べたい人」がマーケット(顧客)となります。逆にビジネス街の近くであれば「昼食としてパンを食べたいサラリーマン・OL」がマーケット(顧客)となります。
そのため起業して事業を興すのであれば、これから提供する商品・サービスとマーケット(顧客)を具体的にイメージすることが大切です。特に競合他社がいる場合はマーケット(顧客層)に対しては具体的にイメージしておくことが必要であり、その手法として「顧客のペルソナ設定」というのも非常に有効です。
(顧客のペルソナ設定とは?⇒「今さら聞けない「ペルソナ」とは。意味やマーケティングでの活用方法、作り方も解説!」)
③起業形態を考えよう
実は起業と言っても、個人事業主としてだけではなく、その形態は様々です。代表的な起業形態について紹介していますので、自分に合った起業形態を見つけていきましょう。
個人事業主として起業
個人事業主として起業する場合は「開業届」を税務署等に提出するだけで起業できます。なお事業によっては許可・認可や免許資格が必要な事業もあるため、事前に確認しておくと良いでしょう。また個人事業主は登記などの手続きも必要ないため、少ない費用で起業できるのがメリットです。
会社を設立して起業
個人ではなく、例えば仲間内で会社(法人)を興して起業する場合は、法務局で法人として登記手続きを行う必要や、税務署への法人手続届出、社会保険事務所に社会保険に関する届出の必要が出てきます。また定款作成などでそれなりの手間と費用がかかりますが、法人としての社会的信頼を得ることできます。
フランチャイズとして起業する
コンビニエンスストアや学習塾、また美容室などの業種に多いのですが、フランチャイズとして加盟する起業形態となります。加盟金や月々のロイヤリティーを払う必要がある一方で、ブランド名(看板名)が高いことから社会的信頼を得やすいというメリットがあったり、本部から開業に向けての資金援助を受けたりするケースもあるので、個人事業主として一からスタートするよりも、少しハードルが低い起業形態です。
④資金調達の方法を考える
事業を始めるにあたっては、事前に開業資金や当面の運転資金を準備しておく必要がありますが、自分で準備できないことがほとんどです。自分で準備することが難しい場合は外部から資金を調達する必要があります。
融資を受ける
融資は主に、日本政策金融公庫や都市銀行、また地方銀行や信用金庫、信用組合など、起業家の資金調達を支援してくれる金融機関の制度融資を利用することがオススメです。
金融機関によっては窓口相談・個別相談を実施しているところもあり、事業計画書を作成など起業に向けて支援を行っているところもあります。またそれ以外にも税理士やあるいは中小企業支援機構などに相談することもできます。
なお、融資への申し込みを行ったあとは、金融機関での審査を受け、無事融資が決まれば借入実行となります。担保や保証の有無、返済方法、融資可能額は、金融機関ごと融資内容ごとによって異なりますが、共通して言えるのは、無理のない返済を心掛けることです。
補助金・助成金を活用する
また融資以外では、中小企業庁や厚生労働省または各都道府県庁などの、国や地方自治体による補助金や助成金などの支援制度もあります。補助金が、募集期間や募集数に限りがあったり、審査にとって初めて受給できるのに対して、助成金は随時受け付けているものが多く、申請したうえで条件満たせば受給できることから補助金よりもハードルが低いとも言えます。
起業する際は、各都道府県庁のホームページ等で情報収集を行い、利用できるものがあればぜひ手続きをしていきましょう。
クラウドファンディングを利用する
金融機関や公的機関以外で資金を募る方法として、今流行りの「クラウドファンディング」を利用する方法もあります。SNS上で、事業内容や収益性の高さをアピールすることで、それに共感して応援してくれ資金を調達する方法です。一般的に寄付型・購入型の2パターンありますが、起業向けなのは「購入型」であり、起業後に商品やサービスを提供する代わりに資金を募るといった方法です。
手順としては、自分の事業内容に合う運営サイトを選択したうえで、資金を募りたい案件を登録します。運営サイトによっては面談や審査があり、審査を通過した時点でクラウドファンディングが開始となります。なおクラウトファンディングには目標金額というのが設定されており、目標未達の場合は資金調達できないケースもあったりと、必ずしも資金調達できるわけではないというデメリットもありますが、誰でも気軽に利用できるのもクラウドファンディングの魅力でもあります。
⑤事業開始の手続きへ
事業を開始するにあたっては、管轄の税務署や県税事務所、また法務局などに届出が必要になります。それぞれの手続きには期限があったり、また費用が発生したりするケースもあるので、ぜひポイントを抑えておきましょう。
個人事業主の主な届出
必要な手続き | 届け先 |
---|---|
個人事業の開業・廃業等届出書の提出 | 税務署 |
所得税の青色申告承認申請書の提出 | 税務署 |
給与支払事務所等の開設の届出 | 税務署 |
個人事業主として起業する場合は必ず税務署へは「個人事業の開業届」を提出します。青色申告制度を利用したい場合には「所得税の青色申告承認申請書」の提出もあわせて行います。加えて自分以外に従業員を雇用する場合は、給与支払い時に源泉徴収(所得税を天引きする)を行うために、「給与支払事務所等の開設の届出書」も必要となります。
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会社設立時の主な手続き
必要な手続き | 届け先 |
---|---|
定款の認証 | 公証人役場 |
定款の提出 | 税務署 |
設立登記 | 法務局 |
法人設立届出書 | 税務署 |
健康保険・厚生年金保険加入の手続き (従業員を雇う場合) | 年金事務所 |
給与支払事務所等の開設の届出 | 税務署 |
法人として会社(株式会社や一般社団法人など)を設立する場合は、定款を作成する必要があります。定款とは、会社の商号や事業内容、役員選任ルールなどの、会社の基本的事項を定めたものにあり、作成後は公証人役場で「定款の認証」を受ける必要があります。
無事定款の認証を受けたら「定款」と「設立登記申請書」を法務局に提出し、法人登記を行うことで、会社を成立することができます、
その後「定款」と「法人設立届出書」、さらには従業員を雇う場合「給与支払事務所等の開設届出書」を税務署に提出します。その他、必要な届け出については国税庁のホームページをご確認ください。
なお、社会保険の手続きについては「健康保険・厚生年金保険新規適用届」などを年金事務所に提出する必要がありますが、最寄りの年金事務所や社会保険労務士に相談しならが手続きを進めていけば問題ありません。
まとめ
今回は、起業についての手順を5つに分けて紹介しましたが、起業するために必要なのは「まずは行動すること」が大切です。
会社員の方や専業主婦の方でも、1回ぐらいは「自分で起業してみたい」と思った方は多い一方で、起業について色々調べているうちに悩んでしまって行動できなくなってしまうことが多々ありますが、
一言で言えば「起業自体に失敗はありません」
特に個人事業主の場合は、事業内容にもよりますが開業届を出すだけで起業することが可能です。もちろん起業してから事業を継続していくことが大変であり、この点は成功もあれば失敗もありますが、事業を継続していくことで学ぶことや、やりがいを感じることはたくさんあります。
今回記事が皆さんの起業に役立てれば幸いです。
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