目次
【社労士監修】同月得喪とは?入社後すぐに退職した場合の社会保険料
人材を採用して無事入社も決まり、できれば長く働いて欲しいと思っていても、その後1ヶ月も経たずにすぐに退職しまうというケースがあります。
社員の退職については強制的に引き留める方法はなく、最終的には会社と社員との話し合いにより決まりますが、事無く退職が決まっても、退職後に残っているのが社会保険料の清算です。
社員が入社後すぐ退職しまった場合、会社の給与担当者からすると、
「社会保険料は給与から控除していいの?」
「社会保険料はそもそも納付しなくてはいけないの?」
と判断に迷うケースもあるのではないでしょうか?
ここでは、社会保険における「同月得喪」とそれに伴い社会保険料の精算方法について解説していますので、ぜひご参考ください。
【この記事でわかること】「同月得喪を理解することで、社会保険料の精算方法がわかります!」
同月内に入退社が起こった場合(同月得喪)
厚生年金保険や健康保険(以下、社会保険)への加入は、会社に入社した月から始まり、退職した日の翌日の属する月の前月で終わります。この点については、社員が「月中で退職した場合」と「月末で退職した場合」とで社会保険への加入期間が異なるので、予め注意しておきましょう。
【退職が月中の場合】
例:3月15日で会社を退職する場合
⇒社会保険の資格喪失は翌日の3月16日
⇒加入期間は3月16日の前月までとなるのため、加入期間は2月までとなります【退職が月末の場合】
例:3月31日で会社を退職する場合
⇒社会保険の資格喪失は翌日の4月1日
⇒加入期間は4月1日の前月までとなるため、加入期間は3月までとなります
つまり、同月内に入退社した場合で、退職した日が月の途中の場合は、加入期間は「0ヶ月」となるので、最初から社会保険に加入していなかったという風に解釈できますが、ここは例外的に「同月得喪」と言い、1ヶ月間は社会保険に加入したものとみなします。
つまり、同月内に入退社した場合は「1ヶ月分」の社会保険料が発生することになります。
給与からの社会保険料控除
同月内に入退社が起きた場合は必ず1ヶ月の社会保険料が発生するので、社員の負担分は給与からチェックオフ(控除)することとなります。
しかし、入社後すぐに退職する場合、一般的に給与は日割計算で支給することとなり、支給する給与よりも社会保険料が高くなってしまうケースがあり、社会保険料(社員負担分)を給与から控除できないことがあります。
特に退職後は社員との連絡が取れない可能性も高まるため、社員が退職の意思を示して会社がそれを承認する段階で、速やかに給与計算を行い、社会保険料における社員負担分とその入金方法を予め社員に伝えておくのが大事なポイントなります。
払った厚生年金保険料が戻ってくる場合も
退職する立場からすれば、社会保険への加入が1ヶ月に満たないのに「1ヶ月分」の社会保険料を支払うに抵抗がある人もいますし、また支払ったとしてもその社会保険料が今度どうなるのか?は気になるところです。会社側としても社員との円満退職を考え、事前に説明をしておきたいところです。
実際に厚生年金保険料については、支払った厚生年金保険料が返還される可能性があります。返還されるケースとしては退職した月と同月内に国民年金に加入した場合、もしくは同月内に再就職して別の会社で厚生年金保険に加入した場合です。
同月内に国民年金に加入した場合は、その月分は国民年金保険料を支払うこととなり、別の会社で厚生年金保険に加入した場合はその月分は改めて厚生年金保険料を支払うことになります。そうすると1ヶ月で2回保険料を支払っている(2重払い)ことになるため、退職した会社に対して、最初に支払った厚生年金保険料については会社負担分と社員負担分を合わせて返還されることとなります。
ついては、退職する社員については厚生年金保険料を返還する可能性があること、また保険料の返還を受けた場合は給与口座へ振り込みすることを事前に説明しておいた方が良いでしょう。退職後は連絡が取れないことがあるため退職前に事前に書面で案内するのばベストです。また社会保険料の負担額が変わるので、源泉徴収票も変わるので差替えの源泉徴収票も本人に郵送する必要があります。
ちなみに健康保険については、1日でも加入している期間がある限りその保障を受け取ることができる状態であることから、保険料の還付はありません。退職する方は退職後に国民健康保険から、もしくは転職や家族の扶養に入ることで新たに健康保険に加入必要があります。結果として1ヶ月に2回、健康保険料を支払う可能性があるので注意が必要です。
雇用保険や所得税は給与控除のまま
雇用保険料については実際に支給された給与をもとに計算されるため、その月分の給与から通常どおり控除して問題はありません。この点は所得税も同様となります。
最後に
同月内の入退社が起きた場合、社会保険料については例え雇用期間が1日だけであったとしても、一回入社して加入手続きを行うと、退職する際にも脱退の手続きが必要となり、また厚生年金保険料の還付が発生したりと、退職後の手続きが煩雑となります。また退職後の社員に簡単に連絡が取れるのは稀ですので、このようなケースでは、いかに事前説明を行っておくかが大事なポイントなります。
もし判断に迷われる場合は、お近くの社会保険労務士にも相談されることをお勧めします。
この記事へのコメントはありません。