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【社労士監修】産前産後休業中の保険料免除制度について
出産予定日が決まると、それに伴い産前産後休業を取得する方も多く、その際の会社と従業員のメリットして、社会保険料を免除される「産前産後休業保険料免除制度」を利用することできます。
今回記事では産前産後休暇中の社会保険料免除のための手続きや、節約できる金額をご紹介します。
【この記事でわかること】
「社会保険料の免除期間がわかります!」
「社会保険料で節約できる金額がわかります!」
産前産後休業保険料免除制度とは?
会社員として健康保険や厚生年金保険に加入している場合、妊娠して子供を出産する場合は社会保険料が一定期間免除されることとなり、これを「産前産後休業保険料免除制度」となります。
なお、子供を出産することが前提のため対象者は女性のみとなり、男性には産前産後休業保険料免除制度は適用されません。※男性でも育児休業を取得する場合は、育児休業期間中の社会保険料が免除されます。
社会保険料の免除期間
産前産後休業中が保険料免除期間
社会保険料が免除される期間は、産前産後休業中(産休中)の期間、すなわち産前42日(多胎妊娠の場合は98日)から産後56日までのうち、妊娠・出産により労務に従事しなかった期間であり、その期間中の社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)が会社負担分と負担分の両方が免除となります。
具体的には、
【社会保険料免除期間】
・産前産後休業を開始した日の属する月から休業を終了した日の翌日が属する月の前月までの期間となります。
となります。
なお、厚生年金保険については社会保険料免除となるものの、加入期間としてカウントされるため将来の年金額に影響はありません。
ケーススタディー
ここでは実際に具体例をあげて確認していきます。
《ケース①》産前産後休業が月中で終了する場合
出産予定日:10月15日
産前産後休業開始日:9月4日(産前42日)
産前産後休業終了日:12月10日(産後56日)
まず産前産後休業期間を考えるときの基準は「出産予定日」となります。
次に出産予定日を基準として産前42日(出産予定日を含む)、産後56日の日付を確認します。
実際の産前産後休業開始日は自分で選択できますが、もしフル期間取得するとなると
社会保険料の免除期間は
免除期間開始月:9月(産前産後休業開始日の属する月)
免除期間終了月:11月(産前産後休業終了日の翌日=12月11日の属する月の前月)
となり3ヵ月分の社会保険料が免除となります。
(給与控除の場合は前月分の社会保険料が当月分の給与から控除されるため、実際には10月~12月の給与から社会保険料が免除されます)
《ケース②》産前産後休業が月中で終了する場合
出産予定日:11月5日
産前産後休業開始日:9月25日(産前42日)
産前産後休業終了日:12月31日(産後56日)
この場合も産前産後休業をフル期間で取得するとなると、
免除期間開始月:9月(産前産後休業開始日の属する月)
免除期間終了月:12月(産前産後休業終了日の翌日=1月1日の属する月の前月)
となり、4ヵ月分の社会保険料が免除となります。
(給与控除の場合は前月分の社会保険料が当月分の給与から控除されるため、実際には10月~1月の給与から社会保険料が免除されます)
つまり産前産後休業期間が月末の場合は、1ヵ月分の社会保険料が多く免除されることになりますので、この場合は社会保険料の免除期間を誤らないよう注意が必要です。
出産予定日と出産日が異なる場合
産前産後休業を取得する際は「出産予定日」を基準に考えますが、出産日が出産予定日よりも前倒しになったり遅れたりすることは多々あります。
《出産日が予定日より遅れた場合》
出産予定日:10月15日
産前産後休業開始日:9月4日(産前42日)
産前産後休業終了日:12月10日(産後56日)⇒実際の出産日が11月6日となった場合は?
まずは出産予定日を基準に産前産後休業を取得することになるため、フル期間を取得するとなると、産前産後休業期間は9月4日~12月10日となります。
その後、当初の予定よりも遅れて11月6日に出産した場合は、遅れた分も含めて産前産後休業の対象となります。つまり産前産後休業は9月4日~1月1日までとなり、出産が遅れた分(22日分)産前産後休業が延長されることとなります。
出産前の産前産後休業期間:9月4日~12月10日(保険料免除期間は9月~11月)
出産後の産前産後休業期間:9月4日~1月1日(保険料免除期間は9月~12月)
もし、出産日が遅れて産前産後休業期間の終了日が月末を跨ぐようであれば、保険料免除期間も異なってきます。
《出産日が予定日よりも早まった場合》
出産予定日:10月15日
産前産後休業開始日:9月4日(産前42日)
産前産後休業終了日:12月10日(産後56日)⇒実際の出産日が10月1日となった場合は?
まずは出産予定日を基準に産前産後休業を取得することになるため、フル期間を取得するとなると、産前産後休業期間は9月4日~12月10日となります。
その後、当初の予定よりも早まり10月1日に出産した場合は、産前産後休業の終了日は出産日の10月1日を基準とするので、産前産後休業は9月4日~11月26日までとなり、出産が早まった分(14日分)産前産後休業が短縮されることとなります。
出産前の産前産後休業期間:9月4日~12月10日(保険料免除期間は9月~11月)
出産後の産前産後休業期間:9月4日~11月26日(保険料免除期間は9月~10月)
短縮されたことで終了月が異なる場合、保険料免除期間も異なってきます。
《出産日が早まった場合の再算定》
なお、この際に注意しておきたいのが、産前産後休業の開始日よりも前にすでに休業に入っていた場合です。この場合は、出産日が早まった分、出産日をベースとして産前産後休業期間を再算定することが可能です。
出産予定日:10月15日
出産日:10月1日
産前産後休業開始日:9月4日(産前42日)
産前産後休業終了日:12月10日(産後56日)⇒産前42日(9月4日)よりも前、8月14日より休業していた場合は?
この場合、出産日10月1日を基準にして8月21日~11月26日を産前産後休業期間を再算定することが可能であり、その場合は保険料免除期間は8月~10月までとなります。
ただし、先述したとおり休業していることが条件なので、当初の出産予定日に合わせて9月4日から休業開始している場合(8月は就労している場合)は、そもそも産前産後休業開始日は9月4日のまま変わりません。
社会保険料免除の申請手続
産前産後休業保険料免除制度の適用を受けるためには、産前産後休業中に手続きを行う必要があります。一方で産前産後休業が終了した後で手続きできることも可能ですが、手続きするまでは社会保険料を負担しなくてはいけないので、できれば産前産後休業を取得する段階で手続きを行うのがベストです。
なお、産前産後休業保険料免除制度の申請手続き自体は、被保険者(社員)から申し出を受けた事業者(会社)が健康保険組合と会社所在地を管轄する年金事務所に「産前産後休業取得者申出書」を提出することで手続きが完了します。
書類の提出方法は電子申請、郵送、窓口持参のいずれかを選択でき、申請書は健康保険・厚生年金保険 産前産後休業取得者申出書/変更(終了)届からダウンロードが可能できます。
社会保険料免除で節約できる金額
産前産後休業中の社会保険料の免除は、休業中の金銭的負担を軽くできるので、ここでは事例を踏まえてどれくらい節約できるのかを検討してみます。
なお、産前産後休業を取得する場合、引き続き育児休業も取得するケースが多いので、ここでは産前産後休業と育児休業時における社会保険料免除を含めています。
【ケース】
- 東京在住 30歳 女性
- 2021年4月1日に出産予定(胎児は1人)
- 産前産後休業後はさらに育児休業を取得する予定
- 育児休業期間のは子供が1歳になるまで(2021年2月19日~2021年3月31日)
- 賞与はなし
【月収16万円/年収192万円の場合】
産前産後期間の社会保険料免除額:67,680円
育児休業期間を含めた社会保険料免除額:315,840円
【月収20万円/年収240万円の場合】
産前産後期間の社会保険料免除額:84.600円
育児休業期間を含めた社会保険料免除額:394,800円
【月収30万円/年収360万円の場合】
産前産後期間の社会保険料免除額:126,900円
育児休業期間を含めた社会保険料免除額:592,200円
【月収40万円/年収480万円の場合)】
産前産後期間の社会保険料免除額:173,430円
育児休業期間を含めた社会保険料免除額:809,340円
この他にも所得税や雇用保険料も節約できます。なお住民税については前年所得をベースに課税されるので、産前産後休業中また育児休業期間中でも負担がありますが、育児休業明けの住民税は軽減されます(出産手当金や育児休業給付金は非課税のためです)
★興味ある方はぜひ↓~育児休業期間中の社会保険料免除と手取り収入について~
産前産後休業保険料免除制度における留意点
産前産後休業保険料免除制度を利用するには、人事労務の担当者はいくつか留意点を理解しておく必要があります。
【主な留意点】
- 出産とは、妊娠85日(4カ月)以降の出産(早産や死産、人工妊娠中絶)を指す
- 産前産後休業期間の変更や産前産後休業終了予定日よりも早く産前産後休業期間が終了する場合、「産前産後休業取得者変更(終了)届」の提出が必要
- 産前産後・育児休業の免除期間が重複する場合は、産前産後休業が優先される
また、出産予定日が変更になる場合や、当初予定していた育児休業期間を変更する場合は、変更届の提出が必要です。
事業主に対する取り扱い
産前産後休業保険料免除制度は、従業員だけでなく会社にも適用されるため、産前産後休業期間中は社員のみならず会社負担分も同様に保険料免除となります。
また育児休業期間中も同様に社会保険料免除となり、従業員だけではなく会社負担分も免除になります。
まとめ
- 産前産後休業保険料免除制度とは、産前産後休業期間中の健康保険・厚生年金保険の保険料が事業者・労働者ともに免除になる制度である。
- 事業者は労働者からの申し出があった時点で、速やかに健康保険組合や事業者の所在地を管轄する年金事務所に申請手続きを行う。
- 産前産後休業期間に変更があった場合は、変更届を提出しなければいけない。
- 産前産後休業保険料免除制度は事業主も同様に保険料の免除対象となります。
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