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【社労士監修】求職者支援制度とは?~失業手当がもらえない場合の給付金~

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【社労士監修】求職者支援制度とは?~失業手当がもらえない場合の給付金~

 会社員として働いている方の場合は雇用保険に加入しているため、万一失業したとしても、雇用保険から基本手当(失業手当)が支給されることとなり、再就職先が見つかるまでなんとか生活するこができます。

一方で個人事業主やフリーランスの方など雇用保険に加入できない方の場合はどうなるのでしょうか?
一般的なイメージとしては、

「雇用保険に加入していないのだから、廃業しても手当はもらないでしょ?」

と思われがちですが、実は全く手当がないわけではなく、雇用保険における基本手当(失業手当)がもらえない方を対象として、失業した人を支援する国の制度のひとつに「求職者支援制度」というものがあります。

今回記事では「求職者支援制度」について詳しく解説していきますので、基本手当(失業手当)をもらえない方は必見です。

【この記事でわかること】

「雇用保険の加入していなくても、
無料の職業訓練とセットで月10万円の給付金がもらえます!」

「求職者支援制度」とは?

「求職者支援制度」とは、雇用保険に加入しておらず基本手当(失業手当)を受けられない人を対象として、早期就職を可能するために国が支援する制度となります。
ハローワークの求人紹介に加え、無料の職業訓練を受けることができ、また職業訓練受講給付金として月10万円がもらえます。

実際には2パターンがあり

パターン① 無料の職業訓練のみ受ける
パターン② 無料の職業訓練を受けながら職業訓練受講給付金(月10万円)を受給する

後ほど解説しますが、職業訓練受講給付金については収入条件等があるため、収入があるものの就職に向けて職業訓練を受けたい方は、無料の職業訓練のみを受けることが可能です。

職業訓練のコースは2つ

「基礎コース」と「実践コース」

職業訓練は大きく2つのコースに分かれており、

[基礎コース]社会人経験のない人向け
[実践コース]特定分野の専門知識を身につけて就職したい人向け

といったように、企業で働くための基礎が学べる「基礎コース」と、ITや介護、簿記といった専門的なスキル・技術を身につけられる「実践コース」があります。

基礎コースでは主にパソコン操作やWordによる文書作成、Excelによる表計算などのの基礎操作を学んだあり、ビジネスマナー等の基礎講座を受講するようなイメージですが、逆に実践コースはより専門性の高い知識やスキルを習得するための講座であり、職種ごとに設定されているかたちとなります。

【実践コースの具体例】

  • PC経理事務科=経理知識に加えWord文書作成、Excel表計算の基本操作を学べる
  • 医療・調剤・OA事務科=医学基礎知識やレセプト作成を基礎から学べる
  • 保育士養成講座=2年間かけて保育士の資格を取得できる
  • 介護福祉士実務者研修=高齢者介護や日常生活自立支援、介護ケアに関する専門的知識や、技能・技術が習得できる
  • 電気設備管理講座=電気設備の維持・管理に関する知識・技術を習得できる
  • アプリ・WEB・プログラミング養成講座=Javaによるシステム開発を習得できる
  • 建築デザイン科=CADを使用した設計図作成の基礎が学べる
  • 宅建・不動産科=宅地建物取引士の資格取得に必要な知識が学べる

…etc

実際の訓練コースは都道府県のハローワークが管轄しており、都道府県によって受けられるコース、受けられないコースがあるため、お住まいの地域で希望するコースが有るか無いかは「求職者支援訓練 認定コース情報」から検索することができますので、事前に確認しておくと良いでしょう。

また、最近では医療事務や美容関係等のコースは人気があるため受講できない可能性もあります。その場合は他の都道府県での受講が可能かどうかハローワークに問い合わせてみましょう。

訓練受講の要件

なお、求職者支援制度における無料の職業訓練は誰もが受講できるわけではなく、基本的には雇用保険に加入していない方や基本手当(失業手当)が受給できない方が対象となっています。

【訓練受講の要件】

  • ハローワークに求職の申し込みをしていること
  • 雇用保険被保険者や雇用保険受給資格者でないこと
  • 労働の意思と能力があること
  • 職業訓練などの支援を行う必要があるとハローワーク所長が認めたこと

一般的には、雇用保険加入しないまま失業した人や、もともと雇用保険の対象とならない自営業やフリーランスの方は廃業した場合が想定されますが、要件さえみたせば在職しながら正規雇用を目指している人も受講対象者となりますので、その場合はハローワークに事前に問い合わせてみましょう。

一方、雇用保険における失業手当を受給できる場合は「公共職業訓練」を受講することとなるため、以下のチェックシートで自分がどの職業訓練に該当するのか確認しておくと良いでしょう。

職業訓練チャート:休職中で訓練を受けて就職したい→1雇用保険を受給できない→1求職者支援、2障害者訓練。休職中で訓練を受けて就職したい→2雇用保険を受給できる→離職者訓練。求職者支援は実践コース(基礎技能+実践技能)と基礎コース(社会人の基礎)に分かれる。離職者訓練は委託訓練(事務・サービス)と施設内訓練(ものづくり系)に分かれる。

※出典:厚生労働省ハロートレーニング(離職者訓練・求職者支援訓練)

無料で受講できるメリット

実際に求職者支援制度における職業訓練期間は2~6ヶ月が一般的ですが、それを無料で受講できることができます(※テキスト代等一部自己負担が発生することがあります)
通常、専門性の高い講座を受講する場合は個人で通えば数万円から数十万かかりますが、これが基本無料となるのも、大きなメリットと言えるでしょう。

なお、最初に「基礎コース」を受講したのに就職が決まらなかった場合、ハローワークで認められれば続けて、より専門的な「公共職業訓練コース」を続けて受講することも可能ですが、「実践コース」や「公共職業訓練コース」を受けた場合、その後少なくとも1年間は他のコースを受講することができないため、実践コースを受講する場合は自分のキャリア形成やなりたい職業を予め決めておいた方が良いでしょう。

職業訓練受講給付金は月10万円

給付金がもらえるための条件は2つ

冒頭でもの述べたとおり、職業訓練受講給付金は月10万円となりますが、ただ失業しているだけではもらうことはできず、あくまでも働く意思があることが前提となります。そのため給付金をもらうための要件の中にも、働く意思と能力があることが求められています。

【職業訓練受講給付金の受給要件①】

  • ハローワークに求職の申し込みをしていること
  • 雇用保険被保険者や雇用保険受給資格者でないこと
  • 労働の意思と能力があること
  • 職業訓練などの支援を行う必要があるとハローワーク所長が認めたこと

※無料の職業訓練を受ける時の要件と同じです。

つまり、ハローワークに求職の申し込みをしたうえで、求職活動として職業訓練を受けながら、給付金をもらうこととなります。

また職業訓練受講給付金自体が、セーフティーネットの意味合いが強く、実際に失業していたとしても一定の収入がある場合は給付金を受け取ることができません。つまり雇用保険の対象外で失業手当がもらえずに収入が少ない(もしくは無い)方が給付金を受け取ることができます。

【職業訓練受講給付金の受給要件②】

  • 本人収入が月8万円以下(シフト制で働く場合は月12万円以下※令和3年9月末までの特例)
  • 世帯全体の収入が月25万円以下
  • 世帯全体の金融資産が300万円以下
  • 現在住んでいるところ以外に土地・建物を所有していない
  • 全ての訓練実施日に出席している(やむを得ない理由がある場合は、8割以上の出席率で可)
  • 世帯の中で同時にこの給付金を受給して訓練を受けている者がいない
  • 過去3年以内に、偽りその他不正の行為により、特定の給付金の支給を受けたことがない

実際に給付金を受け取れることができる人としては、雇用保険に入らないまま失業した方や、自営業やフリーランスの方で廃業した方はもちろんのこと、雇用保険に入ったいたものの再就職先が見つからないまま失業手当の受給期間が終了してしまった人も含まれます。

また受給要件にもあるとおり、完全に失業していることまでは必要とせず、要件さえ満たせばパート・アルバイトとして少し収入を稼ぎながら、正規雇用を目指して求職活動している場合においても、給付金を受け取ることができます。

遅刻や欠席には要注意

給付金を受けるための条件の中に「全ての訓練実施日に出席している」とありますが、正直なところ遅刻や欠席には非常に厳しいです。ただし、やむをえない事情などがある場合については欠席が認められているので、どうしても欠席せざるを得ない時は下記要件を予めチャックのうえ、管轄のハローワークに相談することをお勧めします。

【欠席が認められるための要件】

  • インフルエンザなどの感染症に感染したとき
  • 家族がインフルエンザなどの感染症に感染し、看病の必要があると医師に判断されたとき
  • 企業実習先にインフルエンザなどの感染症にかかった人が出て、訓練を受講できなかったとき
  • 大規模な災害が起こったなどで訓練に行けなくなったとき
  • 裁判員に選ばれたとき
  • ハローワークの指定来所日と訓練がかぶったとき
  • 就職活動の試験や面接と訓練がかぶったとき

…etc

実際に50%以上の人が就職に成功

厚生労働省が公表している資料では、この求職者支援制度を利用して職業訓練を受講した人のうち、就職に成功した人は50%を超えていることがわかります。この結果には正社員以外にも契約社員、派遣社員、アルバイトなどが含まれていますが、雇用保険に加入している以上、いずれも一定時間以上の勤務時間があり、安定して長期間働けることが見込まれる就職です。

※出典:厚生労働省「求職者支援制度の実績」

ちなみに、ハローワークの登録者全体で見た場合は就職率は約30%と言われているため、やはり知識やスキルを積極的に習得しようとする人程、就職に成功しやすいとも言えます。

求職者支援制度への申込方法

求職者支援制度を利用するためには、居住地のハローワークに行き「求職の申し込み」を行うことからスタートします。

そこで就職相談を受けながら「求職者支援制度」を利用したい旨を申し出て、今まで培ってきた自分の経験・スキルと今後のキャリアビジョンに合わせて、「基礎コース」「実践コース」を選択していきます。ただし、選択するコースによっては募集人数の関係から申し込みができなかったり、またハローワークにおける就職相談で「必要ない」と判断された場合は、希望するコースを受講できない可能性もあるので注意しましょう。

【求職者支援制度 申し込みの流れ】

申し込みの流れとしては、大まかに以下のとおりとなります。

手順①求職申し込み
ハローワークに「仕事を探したい」と申し込み、「求職者支援制度」を使いたいことを説明。求職者支援給付金をもらいたい場合は同時に申し出る。

手順②コース選択
ハローワークで職業相談を受け、受講する訓練コースを選ぶ
※コースはインターネットでも調べられる(職業訓練検索)ので事前に確認しておくと良いでしょう。

手順③ハローワークに申し込み
コース受講の申込み書類をもらい、申込み手続きを行います、また求職者支援給付金をもらいたい場合は、同時に必要書類を持っていき申請手続きを行います。(ハローワークにおける事前審査があります)

手順④面接を受ける
訓練実施機関が行う面接を受ける。場合によっては筆記試験があります。

手順⑤「就職支援計画」の作成
選考を通過したら合格通知を持ってハローワークに行き「就職支援計画」を作ってもらいます

手順⑥訓練開始後も定期的にハローワークへ
訓練が始まっても、月に1回の指定日にはハローワークに行って受講状況や就職活動の状況を相談を行うこととなります。また求職者支援給付金も月1回の支給となるので、手続きを忘れないようにしましょう。

最後に

雇用保険に加入していなかったことで基本手当(失業手当)がなく、また失業中の収入が無い人にとっては、求職者支援制度における職業訓練受講給付金は非常に便利な制度ではないでしょうか?

今後はますます働き方改革が進み、個人事業主やフリーランスの方が多くなるとも言われていますが、一方で雇用保険の対象とはならないことから、なかなか起業や独立に踏み出せない方も多くいます。

もし自分自身のスキルアップはもちろんのこと、起業・独立等のキャリアをお考えの方は、ぜひ求職者支援制度を利用してみてはいかがでしょうか?

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