【年金改正】
年金の受給開始年齢が変わります!
~繰り下げ支給70歳から75歳まで延長~
令和2年5月29日の第201回通常国会において年金制度の機能強化のための国民年金法などの一部を改正する法律=《年金制度改正法》が制定されました。今回改正となった背景は、今までの年金制度が夫婦片稼ぎモデル(夫=会社員、妻=専業主婦」や終身雇用制度(企業における定年制度)等を前提として設計されていたことから、女性活躍推進法や働き方改革による現代の働き方とのギャップ生じていました。今後はさらに性別年齢にかかわりなく、より多くの人たちがこれまでよりも長い期間にわたり、また多様な形で働くことが見込まれることから、現代の働き方に見合うような形で年金制度を改正したものとなります。(もちろん年金財政を立て直すという趣旨も含まれています)今回の年金法改正に伴う改正点は以下の4つとなります。
1.被用者保険(厚生年金保険・健康保険)の適用拡大
2.在職中の年金受給の在り方の見直し(厚生年金保険)
3.年金受給開始時期の選択肢の拡大(厚生年金保険)
4.確定拠出年金の加入可能要件の見直し
これらの改正点が令和4年2022年4月1日より施行されることとなりました。(※一部の改正点については施行時期が異なります)
では実際に今回どのような改正が行われたのか?今回は「年金受給開始時期の選択肢の拡大」について解説していきます!
受給開始時期は選択できるの?
現時点で年金をもらっている人またはこれからもらう予定の人は、ご承知のとおりかと思いますが、年金の受給開始時期というのは基本は65歳からスタートしますが、現在は個人の判断で60~70歳まで間で自由に選択することができます。65歳よりも前倒しでもらうことを「繰り上げ支給」、65歳よりも遅くもらうことを「繰り下げ支給」と言い、それぞれメリット・デメリットがあります。
【繰り上げ支給】
メリット:65歳よりも前倒しでもらえる(最大60歳まで前倒し)
デメリット:繰り上げた分、年金額が減額となる(1月あたり0.5% 最大30%)【繰り下げ支給】
メリット:繰り下げた分、年金額が増額となる(1月あたり0.7%、最大42%)
デメリット:65歳より受給開始が遅れる(最大70歳まで)
簡単に言えば、65歳よりも早くもらおうとすれば年金額が減額となり、65歳よりも遅くもらおうとすれば年金額が増額となります。なお一旦増減した年金額はその後変わることはないので、慎重に判断した方が良いでしょう。
法改正によって何が変わるの?
さて、今まで説明してきた「繰り上げ支給」「繰り下げ支給」についてですが、今回の法改正によってその仕組みも改正されることとなりました。ではどのような改正が行われるのでしょうか?
ポイントは大きく分けて2つあります。
- 【繰り下げ支給の上限年齢の引き上げ】
改正前は繰り下げ支給は最大70歳まででしたが、これが75歳まで引き上げることとして、受給開始時期を60歳~75歳までの間で選択可能となります。
(※令和4年4月から施行され、その時点で70歳未満の人が対象となります)- 【繰り上げ支給時の減額率の改正】
改正前の減額率は1月あたり0.5%で最大30%(0.5%×60ヶ月)でしたが、改正後の減額率は1月あたり0.4%で最大24%(0.4×60ヶ月)となります。
(※令和4年4月1日以降、60歳に到達する人が対象となります)
やはり一番のポイントは、75歳まで繰り下げ支給をした場合、最大で84%(0.7%×120ヶ月)の増額となることです。老齢基礎年金だけで言えば、概ね年金額は78万円で推移しているので、金額にすると最大で約143万円となります。もちろんその分支給開始時期を遅らせることとなるため、個々の老後生活をシミュレーションしながら判断していくことが必要となりますが、貯蓄に余裕がある人は前向きに検討してみると良いでしょう。なお最近の資産設計では、こういった公的年金については増額を目的として支給開始年齢をあえて遅らせ、退職してから公的年金の支給開始時期までの間については、個人年金保険やiDeCoで準備する方法があります。この点については、今回の法改正によって確定拠出年金の加入可能要件も見直されています。
★その他の年金法改正点についての詳細はこちら↓
この記事へのコメントはありません。