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【社労士監修】雇用保険の失業手当を受けると年金が停止されるので注意しよう!

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【社労士監修】雇用保険の失業手当を受けると年金が停止されるので注意しよう!

今では「人生100年時代」「生涯現役」と言われていますが、60歳を迎えるとなると、このまま会社に勤務し続けるか、一旦定年退職して第2の人生を歩みだすか、多かれ少なかれ迷う方もいるではないでしょうか?

なお、今では働きながら年金をもらう方も多くいますが、年金をもらいながら働いていた方が60歳以降に退職した場合、または退職後は年金を繰り上げ受給したうえで職を探そうと考えている場合で、求職申し込みのためにハローワークに行った際は注意が必要です。

実際に、ハローワークに行って求職の申し込みをして、雇用保険の失業手当の受け取った方の中には、

「退職したので失業手当をもらったら、年金が停止されて逆に手取りが減った」
「失業手当だけでは足りず、年金を請求したら受給できなかった」

という声が少なくありません。

今回記事では、60歳以降に定年退職をする方を中心に、雇用保険における失業保険と年金との関係について、わかりやすく解説していきます!

【この記事でわかること】
「失業手当をもらうと、金額関わらず年金は停止されます!」
「失業手当と年金の額を比較して、手取りの多い方を選択できます!」

雇用保険における失業手当(基本手当)とは?

雇用保険における失業手当(基本手当)とは、文字通り失業している場合に受け取ることができる給付金となります。

なお、失業手当を受け取る場合は、まずはハローワークに行って求職の申し込みを行う必要があります。その後は概ね1ヶ月単位でハローワークに行って失業の認定を受けたうえで、失業手当の給付を受けることになります。

年金停止されるのは「老齢厚生年金」

実際にハローワークに行って求職の申し込みを行うと、年金の支給が停止されますが、雇用保険自体が会社に雇用される会社員等を対象としているため、年金のうち支給停止されるのは「老齢厚生年金(厚生年金保険)」となり、老齢基礎年金(国民年金)については支給停止されることはありません。

また年金が支給停止される理由として、雇用保険における失業手当は、求職の申し込みをすることを前提に支給されるため、あくまでも働く意思がある人が対象となりまが、一方で年金自体は加齢によって働くことができない人を対象としているため、働く意思のある人(失業手当が支給される人)に年金を支給するとなりと矛盾が生じてしまうからです。

また高年齢者雇用安定法により65歳までの雇用が守られていることからすれば、65歳までは働く環境が整っているとも言え、年金というよりは失業手当のよる生活保障が優先されているとも考えられます。

なお、すべての老齢厚生年金が支給停止と対象となるわけではなく、支給停止されるのは65歳未満の老齢厚生年金についてのみとなります。仮に失業手当が65歳以降支給されていたとしても老齢厚生年金については支給停止されず全額支給されることとなります。

支給停止開始は求職申し込みの翌月から

年金が支給停止される期間を「調整対象期間」とも言いますが、年金が支給停止されるのは、「ハローワークで求職の申し込みをした月の翌月から、失業手当の受給が終わった月まで」となります。

しかし、調整対象期間のすべての年金が支給停止されるわけではなく、歴月単位で見て、ハローワークで失業の認定を受けずに失業手当が全く支給されたなかった月があれば、その分の月の年金は支給されることになります。ちなみに自己都合退職による失業手当の給付制限期間も年金は支給停止となります。

この点について、失業の認定を受けて失業手当が1日分のみ支給されたとしても、20日分支給されたとしても、その月は失業手当が支給された月となるので、その月分の年金は支給停止となります。

★給付制限期間について詳しく知りたい方はこちら↓

事後精算で年金がバックされる

先述したとおり、失業手当を1日分でも支給された月がある場合は、年金が全額支給停止となります。

一方で、失業手当の支給日数が同じであっても、月を跨ぐが跨がないかで年金が支給停止される月数が異なる場合があります。また失業手当を1日分のみ支給された人と20日分支給された人とで、年金が同じく全額停止となると不平等でもあります。

そういった状況を是正するために、調整対象期間が終了すると、過去に遡って調整が行われ年金が支払われるケースがあり、これを「事後清算」と言います。

ここで事後清算前と事後精査後で何が異なるのか確認していきましょう。

事後精算前

事後精算前については先述したとおり、「ハローワークに求職の申し込みをした月の翌月」から年金が支給停止となります。

例えば5月15日に求職の申し込みを行うと、翌月の6月から年金が支給停止となります。仮に自己都合退職などで失業手当が給付制限期間中であったとしても年金は支給停止となります。また失業手当の支給日数が150日だった場合、150日分の給付を受け終わった段階で(12月)で調整対象期間が終了となり、翌月1月から年金の支給が再開となります。

事後精算の仕組み

事後精算の仕組みについては、調整対象期間中に支給停止されていた年金のうち、過去に遡って支払いできる月数(支給停止解除月数)を再計算するため、次の式で計算されます。

【支給停止解除月数】 

=(実際に年金が支給停止された月数) − (失業手当の支給日数÷30日)

※(失業手当の支給日数÷30日)に1未満の端数が生じる場合は、端数を1に切り上げます。

この計算によって、支給停止解除月数が1ヶ月以上となった場合は、年金がその月数に応じて支払われることとなります。

事後精算後

事後精査前に6月から12月までの7ヶ月間は、調整対象期間として年金が支給停止されますが、事後精査の仕組みによって、支給日数150日÷30日で支給停止解除月数が5ヶ月となることから、7ヵ月-5ヶ月で2ヶ月分の年金が過去に遡って支給されることになります。

まとめ

このように、60歳から65歳になるまでの間は、雇用保険における失業手当と同時に年金を受給する場合は、事後精査の仕組みはあるものの、年金が支給停止されるのは避けられないため注意が必要です。

もし60歳以降に退職した場合、無収入の状態となるため、雇用保険における失業手当か年金の繰り上げ受給を選択することができますが、年金の繰り上げ受給は将来にわたって年金額が減るため、まずは失業手当を受給することを優先したうえで、仮に失業手当だけで不足する場合は、支給停止の対象とはならない老齢基礎年金(国民年金)の繰り上げ受給を検討しておくのが良いでしょう。

★もう1つの注意点!高年齢雇用継続給付と年金調整について

 

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