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【2025年以降】なぜ高年齢雇用継続給付は縮小・廃止になるのか?
定年延長と言われている中で、現在の賃金形態だと60歳以降は給与が下がってしまうのが一般的ですが、その場合には雇用保険における高齢者雇用継続給付金が支給されます。
しかし、この高齢者雇用継続給付金が2025年以降に縮小されていくこととなり、いずれは廃止する方向で国が動いています。
この言葉だけ聞くと、
「生活補償が無くなるのか?」
「給付金を削らずに、無駄なコストを削減すべきではないか?」
という声も聞こえなくはないですが、高年齢雇用継続給付金の内容と作られた背景を知ることで、給付金の縮小や廃止が行われる理由がわかりますし、給付金がなくなることに対して過剰に不安に思う必要もありません。
今回は社会保険労務士である著者が、高年齢雇用継続給付金の内容と歴史的背景を踏まえ、給付金の縮小や廃止が今後行われる理由について分かりやすく解説していたいと思います。
【今回記事でわかること】
「高年齢雇用継続給付金の制度背景が理解できます」
「縮小・廃止について過剰に心配する必要はありません!」
高年齢雇用継続給付金が作られた背景
高年齢雇用継続給付金とは、もともと高齢者の失業を防ぐために雇用継続の援助又は雇用継続を促進するための給付として平成6年に設けられた制度になります。この平成6年に同時に何が行われたかと言うと老齢厚生年金の法改正です。この法改正は、当時老齢基礎年金(国民年金)は65歳から支給される一方で、老齢厚生年金は60歳から支給されていたことや、当時から高齢化社会における年金の財源が懸念されいたことから、まずは老齢厚生年金(定額部分のみ)の支給開始年齢を平成13年から平成25年にかけて段階的に60歳から65歳までに引き上げてられていくことになりました。
こうなると当然、 今まで60歳で定年を迎え老齢厚生年金をもらおうと考えていた人達は、十分に年金をもらうことができないため、不足部分は働くことによって補う必要が出てきます。一方で当時は高齢者の再就職や雇用継続は今ほど整備されていたなかったため、国は企業向けに60歳以上定年や定年後再雇用を努力義務として設けると同時に、企業の人件費の高騰を防ぐため、高年齢雇用継続給付金を支給することとなったのです。つまりは年金の支給開始年齢を引き上げる見返りとして、作られたのが高年齢雇用継続給付金となります。
★老齢厚生年金の支給開始年齢引き上げについて知りたい方はこちら↓
さらに進む年金法改正で65歳雇用が義務化
平成6年からさらに時が進み、平成12年には老齢厚生年金(報酬比例部分)の支給開始年齢も平成25年から平成37年にかけて段階的に60歳から65歳まで引き上げていくこととなります。
こうなると完全に65歳までは原則として年金が受給できなくなり、国民はその間働くことによる収入が必要となるため、この年金の支給開始年齢の引き上げと同時に、国はさらに企業に対して高齢者の雇用の安定を実現するため、平成25年に高年齢者雇用安定法を改正することとなります。
簡単に言えば、高年齢者雇用確保措置法とは、企業に対して65歳までの雇用確保を義務づけることで、希望者であれば65歳まで会社に雇用されることとなります。つまりは年金の支給開始年齢を引き上げた分の60歳~65歳までの空白期間を、労働収入による穴埋めをする形となり、その後は65歳までの雇用継続が社会的なスタンダートとなっていきます。
高年齢雇用継続給付金が縮小・廃止される理由
時代的な流れからすれば、国としては年金財政の圧迫により老齢厚生年金の支給開始年齢を60歳から65歳まで引き上げる必要性があり、そうなると国民として必然的に65歳までは働くことになります。そのため国は企業に対し65歳までの雇用確保を義務付けることとなりますが、ただ単に義務づけるだけでは人件費高騰を懸念する企業からの反発もあるため、その人件費を補填する意味で、高年齢雇用継続給付金を作られたのは前述したとおりです。
またその間にも、労働人口が減少し人手不足となったことや、高齢化社会に伴う労働者の高齢化も進んだことにより、企業も必然的に60歳以上の労働者を雇用せざるを得ない環境となり、人材確保の観点からも企業努力によって60歳以降の賃金水準を一定維持する取組みも行われてきました。
高年齢雇用継続給付金がこのような時代背景から作られたものであれば、 65歳までの雇用は現代においてもはや社会的スタンダードとなったことからも、60歳から65歳までの雇用のつなぎ役だった高年齢雇用継続給付金はその役目を果たしたとも言え、これが給付金が縮小廃止される大きな理由となります。
高年齢雇用継続給付金は今後どうなるのか?
いきなり廃止するというよりは、第一段階としては給付内容が縮小されることとなります。現時点では高年齢雇用確保措置の経過措置に合わせて、今後の雇用情勢を踏まえながら2025年度を目途に60歳となる人から段階的に現在の給付水準を半減していき、そ2030年度以降に60歳となる人から廃止していく方針となります。
2025年4月からは給付率10%に縮小
現時点で決まっている内容としては、2025年4月から、高年齢雇用継続給付金の給付率を15%から10%に縮小されることが決定しています。(※なお2025年3月31日までに60歳を迎える人(昭和40年4月1日以前生まれの人)は現行法に基づき給付率は15%のままとなります)
今後の動向にも注目
一方で、給付内容を半減しても廃止したとしても、従来のように60歳以降の雇用が不安定かつ整備されていない時代とは違い、60歳以降の賃金が一定水準以上になったことからすれば、昔ほど60歳を迎えたことによる収入の不安定性はないとも言えます。ただし、今後定年は70歳まで引き上げられる可能性もあり、年金の支給開始年齢も70歳に引き上げらる可能性もあります。今までの時代背景からすれば、もしからしたら65歳~70歳以上の対象として、新たな給付金制度が作られる可能性もあるのではないでしょうか?今度の動向も注目していく必要がありそうです。
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