時事問題

【同一労働同一賃金Q&A】正社員の給与は下がる?下がらない?

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【同一労働同一賃金Q&A】
正社員の給与は下がる?下がらない?

今正社員の人たちはこの言葉を聞くたびに非常にシビアになっていることではないでしょうか?
よく正社員の給料が大幅に下がるとか、減りつつあるとかいろんな憶測が飛び交っていますが、結論からすると正社員の方の給料が大幅に下がることはないでしょう。
理由は「同一労働の同一ってそもそも何をもって同一と考えるのか?」という点について、過去の判例で以下のような見解が示されています。

同一労働の「同一」とは?

  1. 業務の内容と責任の程度が同じか?
  2. 業務転換と配置転換があるかないか?
  3. その他事情(正社員の転換制度や高齢者再雇用などの事情)の有無

現在の一般的な企業の雇用形態や社員区分制度を踏まえると、そもそも業務の内容と責任の程度というのが正社員とパート・派遣社員の中で同一なのかどうかが現実的な問題として存在しています。会社組織というのは企業理念をもとに事業計画・予算を立て、その事業計画・予算は各部門、各課・グループの組織目標へと繋がり、それ最終的には組織としての業務量にもつながっていきます。つまり業務量はすでにボックス(箱型)として決まっているということです。また、企業の経営の合理性からして人材の余剰(業務量に対して、従業員が多すぎる状態)は考えられないため、業務量というボックスを、組織に属している各メンバー(正社員、パートアルバイト、派遣社員など)の能力で埋めていくことなると、必ず基幹業務(本来すべき業務内容)以外の周辺業務というのが発生してきます。

上記の図の丸(ヒト)は個々の能力・スキルや労働時間によって大きかったり、小さかったりしますが、ご覧のとおり周辺業務(隙間)が必ず出てきます。ではこの『隙間』は誰が埋めるのでしょうか?
それはお察しのとおり正社員の方となります。もちろん、正社員の方だけに限らず、パート・アルバイトの方や派遣社員の方でも『隙間』を埋めることはできますし、埋めている職場も多くあるかと思いますが、『隙間』を埋めるにあたってネックとなるのが『労働時間』です。

メンバー1人1人の業務量というのは、【個人の能力・スキル】×【労働時間】で決まります。ここで誤解のないように言えば、正社員だから能力が高いとか、パート・派遣だから能力が低いとかとではなく、正社員でもパート・派遣でも能力の高い人は、この隙間を埋めることができる=組織への貢献度も高い人ということになります。

しかし、労働時間については正社員とパート・派遣社員とではその取り扱いは異なります。その違いは以下のとおりです。

【パート・派遣社員】

職務給の度合が強く、一定の時間で一定の業務量をこなすことを前提として雇用されているので、
所定労働時間が固定されており残業がないことを基本としている

【正社員】

職能給の度合が強く、所定外労働時間があることを前提としており、また36協定によって時間外労働が認められているのが一般的。

よって企業側からしても、正社員は時間外労働が可能かつ『隙間』を埋めるのに最適な人材とも言えるので、能力の高低に関わらず、自然と与えられる業務の内容と責任の度合は正社員の方がより高度化していくこととなります。つまり、正社員とパート・派遣社員とでそもそも業務の内容と責任の度合の同一性は認められない可能性が高いということです。

これは、過去の裁判において「パート・派遣社員が日給で、正社員が月給であることは差別的扱いではないか」として争わられたケースはありますが、これは経営の合理性があるとして、差別には当たらないと判断されているので、急に月給から日給になって給与が大幅に減ることは非常に考えにくいです。
仮に企業側が人件費高騰を懸念して大幅に給与を減らすようなことがあれば、それは「就業規則の不利益変更」となるので、企業側は「労働者の不利益の程度」「変更の必要性」「変更したとしてその内容の妥当性」また「労使交渉の状況」という幾つかの条件をクリアしなければならず、かなりハードルが高く実現可能性が低いは明らかであり、人件費の高騰が経営破綻の恐れを招くような事態でなければ、正社員の給与を大幅カットすることはほぼないと言ってよいでしょう。

一方、〇〇手当と言われるものについて、特に業務との関連性が高いもの(皆勤手当、作業手当、通勤手当…etc)については、責任の度合は関係ないため、正社員とパート・派遣社員とで業務内容が同一であれば均等に支給されることとなります。現時点でパートや派遣の方にも同一の手当が支給されているのであれば問題ないのですが、もし支給されていないのであれば、今正社員に支給されている手当は、減額もしくは廃止される可能性があり、また減額や廃止がなくとも、企業全体の人件費コストは上げられないため、正社員の基本給などに影響が出てくる可能性があります。

なお、賞与や退職金についても同じであり、賞与や退職金の意味合いは主に「功労報償」「生活保障」「賃金の後払い」という意味合いがあり、金額の差はあるにせよパート・派遣に社員に支給されないのは不合理であると過去裁判例においても判断されていることから、今後パート・派遣社員に賞与・退職金が支給されることとなれば、企業の人件費コストの増大は避けきれず、正社員の方の賞与・退職金の影響が出てくる可能性が高いと言えます。

ただし、先述したとおり手当や賞与・退職金の規定を不利益に変更するのは「就業規則の不利益変更」となるため、企業側にとってはかなりハードルが高いため、代替措置として比較的ハードルの低い「早期退職を勧奨する企業」や「数年間の経過措置を講じたうえで徐々に給与規定を変えていく企業」が増えていくでしょう。

【早期退職制度】
雇用期間を短くすることで、人件費を削減する方法となります。
※最近、早期退職や終身雇用の終焉等のニュースが流れているのは、同一労働同一賃金の影響であることがわかります。

 

【経過措置による給与規定の変更】
給与規定の変更による労働者の不利益を抑えるため、経過措置期間中は調整給を支給する方法となります。
また経過措置後は調整給が廃止されるものの、経過措置期間中には勤続給また役割給等による給与UPが図られることから、経過措置期間を通じて変更前と変更後の給与を変わらないようにできます。
(不利益がないように見えますが、実際は経過措置期間中は昇給しないため、その分人件費コストを削減できるとも言えます)

 

では最初の質問に戻りましょう!

Q:同一労働同一賃金によって正社員の給料は下がるというのは本当か?

A: 正社員の給料が大幅に下がることはない。手当、賞与・退職金については現在よりも目減りする可能性は高いが、就業規則の不利益変更は企業側にとってはハードルが高いことから大幅に目減りすることはない。ただし企業全体の人件費コストのことを考えれば、 終身雇用制度や年功序列賃金制度を維持することは困難であることから、今後賃金カーブが低くなる可能性、また早期退職勧奨を受ける可能性は高い

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