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もはや30歳から募集!
早期退職制度の年齢若年化が進むの3つの簡単な理由とは?
企業の早期退職制度について、以前は50歳以上や55歳以上を対象にしている企業が多かったが、 ここ最近では45歳以上を対象にする企業も増えており、また30歳以上を対象とする企業も出てきたことで、一気に早期退職制度の若年化が進むようになりました。
実際に大手企業で、45歳以上を早期退職制度の対象にしている企業を、簡単にピックアップしてみると以下のとおりとなります。
- キリンホールディングス
- 朝日新聞
- LIXIL
- 富士通
- NEC
- ノーリツ
- 毎日新聞
- 中外製薬
- 日本ハム
- 旺文社 …etc
また直近では早期退職制度を30歳からとする企業も出てきています。
- 武田薬品工業 国内事業を対象に30歳から早期退職制度を導入予定
これ程までに早期退職制度の若年化が進んでいることについて、不思議に思う方もいらっしゃると思いますが、この早期退職制度の若年化は今後のトレンドとなります。それでは、なぜ今後のトレンドなり得るのか、その3つの理由について解説していきます。
理由①
企業における人件費の高騰化
ご存知の通り、日本の企業というのは従来より、社員格付け制度(賃金制度)における年功序列型賃金制度を採用しており、これらの制度は市場規模の拡大とともに企業規模も拡大していく時は特段問題ないのですが、一旦市場規模が縮小し始め、企業規模も縮小し始めると、企業にとってはマイナス要因となります。
企業にとって人件費とは固定費であり、人件費を決める際には主に二つの方法があります。
- 付加価値に対して、予め決めた労働分配率を乗じて算出する方法
- 売上高に対して、予め決めた人件費比率を乗じて算出する方法
つまり、乗じる比率というのが企業内で予め決められていることから、それに伴い人件費の枠というのも自ずと決まってきます。当然に企業規模が縮小するというのは付加価値や売上高が減ることを意味するので、 人件費の枠自体が小さくなっていくこととなります。しかし、年功序列型賃金制度では社員の高齢化が進むにあたって、賃金の上昇が避けられないため、結果人件費が高騰することになり、企業としては人件費を抑えたいというのが合理的経営判断となります。
理由②
終身雇用制度と解雇権濫用法理
日本の企業における雇用文化として、終身雇用制度があります。この終身雇用制度自体は特に企業に義務付けられているものではなく、法律でもルールでもなく、あくまでも雇用文化となります。簡単に言えば、雇用契約上においては、雇用期間はあくまでも「期間の定めのない」と記載されているに過ぎず、「定年まで雇用する」ことを約束しているものではなく、企業は社員を採用した段階で、定年までの雇用する義務は発生しません。ただし一方で、企業側においては社員を一方的に解雇することはできず、解雇するには合理的な理由が必要となり、これが「解雇権濫用法理」という仕組みになります。
つまり定年までの雇用を約束はしていないものの、一旦社員を採用すると簡単に解雇ができないことから、 人件費を削減したいとなった場合でも、そう簡単に人員を削減(解雇)することができないため、あくまでも「社員からの希望退職」という体で、人員の削減を図っていくこととなり、これが「早期退職制度」 を採用する根本的な考え方となります。
理由③
個人のキャリア形成の変化
従来の個人としてのキャリア形成としては、終身雇用制度のもとにおいて、内部労働市場を言われていたように、採用された企業内でのジョブローテーションを通じて、キャリア形成を図っていき、昇進や昇格による出世を目指しながら、収入を稼いでいくのが一般的でした。企業からしても、出世という社員間競争によって、社員の能力やスキルの向上を図ることができ、ついては企業力を向上させることができました。しかし、このような価値観は当時情報が少ない社会では当たり前のように思われきたかもしれませんが、現在の情報化社会では、多様な価値感が芽生えており、もはや当たり前のことではなくなりました。
以下の図のように、実際に日本の企業内において、出世できる人数はかなり限定的です。
また以下の表のとおり、昇進プロセスの国際比較を見ても、日本企業においては昇進の差がつきにくいこと、また昇進に見切りがつく(昇進の有無が決まる)のが入社してから20年以上(40歳以上になってから)と、海外企業と比べて明らかに長く、この40歳という段階ではすでに家族を扶養していたりと、転職によるキャリア形成が事実上困難となるでしょう。うがった見方をすれば、日本企業が昇進・出世というエサを見せながら、長きにわたり労働力を搾取しているようにも思えます。
早期退職制度を有効活用しよう
海外の企業では、幹部候補としてのキャリアコースは若年層(20代後半)で差がつき、少なくとも30代前半では、 幹部候補コースと非幹部候補コースで半々に分かれることになります。 つまり社内でのキャリア形成を目指す人は幹部候補コースとして残るのも良いですが、一方で転職によるキャリア形成を目指したい人は、早い段階でそれを見極めることができます。今後日本の企業においても、人件費の高騰化を考えれば早期退職制度の若年化が進められていくことは間違いありません。ちなみに早期退職制度の場合においては再就職支援ということを目的として通常の退職金よりも一部割り増しで払う企業が大半であり、そういった意味では自身のキャリア形成を考えたうえで、早期退職制度を有効活用していくのが、 新しい働き方にもつながっていきます。上手く時流に乗るのも賢い方法ではないでしょうか?今後終身雇用制度という雇用文化は衰退していき、若年早期退職制度という新しい雇用文化が生まれるのも近いかもしれません。
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